貧困の国ドミニカで、野球が持つ大きな意味

大リーガーを続々輩出。ドミニカ流の”雑草”教育

ベネズエラからやって来て2カ月になる19歳の捕手、マヌエル・ブスカンはきれいな英語でこう言った。

「英語を一生懸命勉強してきたけど、もっとうまくなりたい。野球選手にとって重要なものだから、毎日勉強しているよ。ほかの国の人とコミュニケーションを取るためにも、英語はとても重要だ」

マヌエルに「成功する選手とそうでない選手の違い」を聞くと、「work and education」と答えた。彼は教育をこうとらえている。

「どういう教育を受け、成長してきたかが後々の差になっていくと思う。だから人として成熟することが必要なんだ」

メジャーに行けない98%の人生

アメリカの雑誌『TIME』によると、毎年400人近くのドミニカ人がアメリカの球団と契約を結んでいる。だが、そこからトップのメジャーリーグまで昇格できるのはわずか2%。つまり、ほとんどの者はスポットライトを浴びられないまま現役生活を終えていく。彼らの行く末を憂慮するのは、かつてカンザスシティ・ロイヤルズでプレーしていたペドロ・デラクルスだ。

「野球選手のキャリアはとても短い。メジャーと契約できない98%には何が起こると思う? 教育を受けていなければ、仕事を得ることは難しい。そうしたら、どうするんだ? この国には多くのさとうきび畑があるが、そこで働いている者は本当に貧しい。だから、われわれは子どもたちをメジャーでプレーできるように鍛えるのと同時に、教育の機会も与えなければならない」

そう熱弁するペドロは現在、サンペドロ・デ・マコリスで「CSA」というNGOプログラムのディレクターを務めている。「CSA」は元メジャーリーガーのトニー・フェルナンデスが施設とプログラムを作り、スポンサーの寄付で運営資金を賄う。現在は14歳から19歳の少年たちが所属し、月曜から金曜の朝8時に練習開始。11時半まで野球に励み、昼食は無料で提供される。多くの少年たちは貧しい家庭の出身で、満足に食べられないために痩せている。だから練習後の昼食は最高の楽しみだ。

取材日は2種類のパスタがメニューだった。午後には先生を招き、英語やフランス語、コンピュータ、コミュニケーション術の授業を受ける。「野球と教育を繰り返して教えていくことで、子どもたちは継続的な努力を身に付けていく」と話すペドロは何だかうれしそうだ。ペドロたちの努力は実を結び、MLBと契約間近の少年が数人いるという。

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