守護神・牧田は、球速130kmでなぜ勝てる 強靱なメンタルと巧妙なテクニック
高校時代にアンダースローへ転向
野球がかくも日本人を魅了する理由の1つは、勝負の決着をつける過程にマインドゲームの優劣が色濃く反映されるからだろう。
特に投手対打者の駆け引きは興味深い。18.44mの距離で対峙し、互いが次の一手を探り合う。球種は何か。どこのコースで勝負してくるのか。初球でインコースを突いてきたボールは、2球後の伏線かもしれない……。相手の心の内を読めれば、投手、打者ともに結果を残す確率は高くなる。
マインドゲームの野球で、勝利への近道は相手より心理的に優位に立つことだ。この点で、2010年ドラフト2位で埼玉西武ライオンズに入団し、現在開催中のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表として戦う牧田和久は特に優れている。
26歳のときに社会人の日本通運からプロ入りした牧田が、まず注目されたのはアンダースローという投げ方だった。もともと上手投げだった牧田が下から投げるようになったのは、静清工業高校1年時の秋。
当時の野球部長にアドバイスを受け、試してみるとコントロールよく投げられた。同学年に球速140kmを投げる投手がいた一方、当時の牧田の球速は約130km。「スピードよりも希少価値の高いアンダースローに活路を求めた」ことが転向の理由だった(webサイト『SPORTS COMMUNICATIONS』より)。
どうすれば、ライバルに勝つことができるか。特に速いボールを投げられるわけではない牧田は、相手との力関係の中で上回ることを高校時から考えていた。野球という相手と競うスポーツにおいて、その思考法は後に大きな武器となっていく。
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