自らの仕事に誇りを持ち、その世界のトップを目指して挑戦している者にとって、理想は右肩上がりで成長していくことだろう。だが、人生はそううまくいかない。誰にも停滞のときは訪れる。
では、その壁はどうやって乗り越えていけばいいのだろうか。
そのヒントを与えてくれるのが、千葉ロッテマリーンズでセンターを守る岡田幸文だ。
2011年から2年連続でゴールデングラブ賞に輝くなど、現在のプロ野球界の外野手で最も美しく、ダイナミックで、かつ堅実な守備を見せる岡田だが、08年のドラフト会議で指名されたときはほとんど注目されないような選手だった。指名順位は育成6位で、年俸は240万円(金額は推定。以下同)。ドラフト1位の木村雄太が1億円+出来高5000万円の契約金を手にした一方、岡田には100万円の支度金が用意されただけだった。
給食センターで働きながら、トレーニング
岡田の野球人生は波瀾万丈だ。栃木の名門・作新学院高校では通算打率が6割を超える成績を残し、日本大学に進学する。しかし、入学直後に左ヒジを負傷し、1年を経たずに中退した。あまりのショックに、岡田は実家で引きこもりになったという。
それでもケガの癒えた1年後の04年、クラブチームの全足利クラブに入団する。日中は足利給食センターで働きながら、夕方になると野球の腕を磨いた。そうして努力を続け、08年秋にロッテの入団テストに合格してプロ入りの夢をかなえた。
ともすれば、大学入学直後のケガで心が折れてしまっても不思議ではない。だが、当時の岡田を「志半ば」という思いが突き動かした。
「プロに入る前にケガをしましたからね。いいときに挫折したのとは違います。周りからはいろいろ言われますけど、自分では『苦労した』とは思っていません。たまたま遠回りしただけ。大事なのは、やり続けることじゃないですか。夢を持って」
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