引きこもりから年俸4000万に這い上がった男

千葉ロッテ・岡田幸文の「やり続ける力」

本人が強靭な意志を持っていたことに加え、大きかったのは、よき理解者がいたことだ。06年に結婚した妻は足利市の職員で、岡田を陰で支えてきた。08年秋に念願のプロ入りが決まったが、扱いは育成選手だ。年俸はサラリーマンの平均より安く、いつクビを切られてもおかしくない。だから妻は足利に残り、働きながら家計を支えた。岡田は「2年間だけやらせてくれ」と妻に頼み、単身赴任で夢を追った。

岡田のよき理解者は、プロの世界にもいた。09年シーズンオフ、ロッテの二軍監督に就任した高橋慶彦だ。09年3月末に支配下登録され、年俸が支配下選手最低額の440万円に増えていた岡田は10年、高橋の下で“英才教育”を受ける。高橋が岡田を育てようと決めた理由は、2つあった。

その1つが、不屈の心だ。高橋が言う。

「ことわざで『後悔先に立たず』っていうものがあるけど、やっぱり精神力の強いヤツのほうが伸びてくる。岡田もそうだよね。二軍から巣立っていける選手とそうではない選手の違いは、そういうところじゃないかな。岡田は死にものぐるいで頑張った。そうやって自分に勝ってきたんだと思う」

自分のタイプをわかってないと、練習方法を間違う

もう1つ、岡田には誇るべき武器があった。プロでも最高峰の守備力と、50mを5秒6で走る快足だ。高橋が続ける。

「岡田にはアピールするものがあった。アピールするものがあると、一軍に近いわけだよね。二軍監督として、どうやって選手を一軍に上げようかと考えると、可能性のある選手を使っていく。よく選手に言うのは、『自分がどういうタイプの選手にならなければいけないのか、考えなさい』ということ。『自分をわかっておかないと、練習方法を間違うよ』って。二軍でも、どうしても可能性のある選手を使っていく」

球界のこれまでの例を振り返ると、最高峰の守備力をベースに一流へと成り上がった選手は少なくない。

たとえば巨人で活躍した川相昌弘や、西武黄金期の名セカンドとして名を馳せた辻発彦だ。近年では、西武の秋山翔吾が挙げられる。12年シーズン序盤、秋山は「自分が出られるのは守備があるから」と話していた。大卒2年目にしてプロ最高峰の守備力を持つ秋山は1年目から多くの出場機会を与えられ、実戦と練習で課題の打撃を磨き、12年シーズンはリーグ6位の打率2割9分3厘と大きく飛躍した。

一方、アマチュア時代から打撃を課題としていた岡田には、得意の守備を突き詰める姿勢があった。そこに、育成選手から一軍のレギュラーまではい上がることができた要因がある。岡田に「凡才がトップに登り詰める方法」を聞くと、彼はこう答えた。

「守備はずっと好きでやってきました。『好きこそものの上手なれ』ではないですけどね。大切なのは、もっとうまくなりたいと、ずっと思っていることじゃないですか」

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