引きこもりから年俸4000万に這い上がった男 千葉ロッテ・岡田幸文の「やり続ける力」

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美技を連発できるのはなぜか

岡田の守備へのこだわりは、一流プロのすごみを実感させられる。彼が美技を連発できるのは、打者が打つ前に半歩動き出していることが背景にある。

「ピッチャーが投げるのは真っすぐ系のボールか、変化球のボールか。キャッチャーのサインまではわからないけど、構えと球種、バッターのタイミングを見て判断します。踏み込んで打つのか、とかですね。準備するという意味で、半歩動き出すということです。心掛けているのは状況判断と、ボールに追いつくまでの速さ。追いつく打球に合わせて捕るのではなく、いけるところでは後ろから入って捕る。状況判断は、捕ってからカットに投げるまでを含めて。ファインプレーも大事ですけど、普通のプレーを普通にやることも大事です」

右打者が踏み込んできた場合、ボールを強くたたいてくる可能性が高く、強烈な打球がセンターからレフト方向へ飛んでくることが予測される。また、ボールを後ろから捕球すれば、その後の送球をいい体勢で行うことができる。岡田は守備について、そこまで細かく考えているのだ。

「初回の1打席目を大事にしろ」

裏を返せば、打撃でも深く考える思考力を備えているといえる。そうした特性を理解した高橋は、二軍時代の岡田を1番打者として育てようと考えた。快足というアピールポイントがあったからだ。広島での現役時代、1番打者として日本記録の33試合連続安打など数々の記録を打ち立てた高橋は、自らの経験から"金言"を岡田に伝えた。

「お前が塁に出るか、出ないかで、チームの攻撃が変わってくる。初回の1打席目を大事にしろ」

10年シーズン開幕から二軍で1番として起用された岡田は、打率2割8分7厘の好成績を残した。6月1日の巨人戦で一軍初出場を果たすと、72試合に出場する。中日との日本シリーズでは第7戦の延長12回に決勝点を呼び込む3塁打を放ち、チームの5年ぶりの日本一に大きく貢献した。このオフには年俸が前年から127%アップの1000万円となり、「奥さんの給料を超えましたね」と満面の笑みを見せた。

翌年は開幕から1番に定着。育成ドラフト出身では史上初となる144試合フル出場、規定打席到達(打率2割6分7厘)を果たした。外野手としてシーズン連続守備機会無失策(359回)のリーグ記録を樹立し、初の個人タイトルとなるゴールデングラブ賞を受賞する。年俸は3200万円まで上がった。

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