“WBC最強打線” ドミニカ強さの秘密 現地取材で探る、メジャーリーガー輩出工場の全貌
前述のクルス記者が事情を明かす。
「財政的な理由だよ。ドミニカでは、他の国より安くアカデミーを運営できる。なぜなら、政府から税金を免除されているからだ。ボールやバット、バッティングマシーンなど、ドミニカに持ち込まれる野球道具もすべて税金が免除される。50人以上の選手を抱える球団では給料がドルで支払われ、所得税を払う必要もない。MLBのアカデミーは、タックス・ヘイブンなんだ」
ドミニカのめぼしい産業は観光くらい。多くの人が従事するさとうきび栽培は収益が低く、その家族の子どもたちは学校に通わず、家業を手伝うケースも少なくない。そんな国において、誤解を恐れずに言えば、野球は貧乏を脱出する唯一の手段なのだ。
大リーガーの80%は貧しい農家の出身
今回のWBC2次ラウンドでアメリカを破って準決勝進出を決めた直後、ドミニカ代表のトニー・ペーニャ監督はこう話した。
「母国出身の大リーガーの80%は貧しい農家の出身。常にプレーを楽しむ理由は、貧しさを忘れるためさ」(『Sponichi Annex』より)
このコメントを読んで、ドミニカの首都サント・ドミンゴ郊外にあるクリーブランド・インディアンスのアカデミーでマニー・ロドリゲスに聞いた話を思い出した。ショートを守る20歳の彼は、昨季、マイナーリーグのダブルAでプレーし、2013年のスプリング・トレーニングが始まる前にドミニカでのプログラムに参加していた。マニーはインディアンスと契約し、生活が一変したという。
「以前は本当に貧乏だったけど、ここに来て人生が大きく変わった。今は食べ物があるし、お金を稼いで家族に家を買うこともできた。もっと稼がないと!」
同じく、インディアンス傘下のマイナーリーグでプレーするチャーリー・アウレリオ、22歳の捕手はこんな話をしていた。
「ここにやって来て、以前より良い人間になれたと思う。今はプロ選手としての責任があるからね。家族を助けたいから一生懸命プレーしなければならない。オレが頑張って働かないと、家族を助けることはできない」
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