楠木建「すべては好き嫌いから始まる」

今の日本に必要なのは「矢印のリーダー」だ

日本の新しいモデルを創る「新世代リーダー」とはどんな人なのか。どんな能力、教養、マインドセット、行動が必要となるのか。国内外のリーダーを知り尽くした、各界の識者たちに「新世代リーダーの条件」を聞く。
第8回目は、大ベストセラー『ストーリーとしての競争戦略』の著者である、楠木建・一橋大学大学院教授に、これからの時代に求められるリーダー像について聞く。

「三角形のリーダー」より「矢印のリーダー」

今の日本は、リーダーについての考え方が偏っている。多くの人は、組織の中で出世してトップに立つ人をリーダーだと思っている。銀行でも官庁でもどの組織でも、よくできた三角形のヒエラルキーが先にあり、皆が上へ上へと目指していくイメージだ。つまり、三角形の頂点に立つ「三角形のリーダー」といえる。

しかし、本来のリーダーは、こうした「三角形のリーダー」ではない。三角形で偉くなりたい人はたくさんいる。いつの時代も供給過剰だ。

一方で、ゼロから商売の基やストーリーを創る人、実際に商売を動かしていくリーダーは少ない。供給が需要にまったく追いついていない。この意味での本来のリーダーは、ビジネスが向かっていく先を切り拓く「矢印のリーダー」。「三角形のリーダー」には組織の頂点にいるという位置エネルギーがある。これに対して「矢印のリーダー」が持つのは運動エネルギーだ。

「三角形のリーダー」は代わりがいくらでもいるが、「矢印のリーダー」は、その人がいないと始まらない。そこが違う。「矢印のリーダー」が創る戦略ストーリーがないと、そこにどんな「X」を掛けても、ゼロにしかならない。「X」には、ファイナンス、法務、人事、マーケティングなど、さまざまな「担当者の仕事」が該当する。しかし、それらの機能ごとの担当者がいくら優れていても、最初の戦略ストーリーがゼロだとゼロにしかならない。

歌手のジェームズ・ブラウンは「ソウルミュージックは最初の一音で決まる」と言っている。ビジネスでも「こういう商売をやろう!」という最初の一発がないと、何も動かない。

いつの時代も、最初の一歩を創る人は希少だが、今は「X」のほうが花盛りで、財務、法務などのプロとして実績を上げた人が、「三角形のリーダー」になる傾向がある。たとえば、財務のプロとしてCFOになった人が社長になるとか。「三角形のリーダー」からは戦略のストーリーが出てこない。

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