世界が羨望する日本女子プロレスの「異端児」 変幻自在のASUKAは批判や嫉妬にブレない

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常見:男女関係なく、昔の成功体験にとらわれているからこその生きづらさを感じます。未だに昭和の男性像にすがっているような。これは男性も苦しいし、その男性を基準とするから女性も苦しいという。私、今回の対談で感じたことなのですけど、ASUKAさんはポジションの取り方がすごいのだと思いました。

日本では、自ら大会をプロデュースしていきました。圧倒的に異端児でした。WWEでは、日本人ディーバ(女子レスラーのこと)というポジションは、もうASUKAさんがとっているわけで。中邑真輔選手など、WWEで活躍する日本人が増えましたし、今後も増えそうな予感ですが、すでに埋まっているポジションもあるわけで。活躍するのは大変でしょうね。

ASUKA:とにかく結果を出していくことが大事だと思っています。

常見:最後に日本のビジネスパーソンへのメッセージをお願いします。

自分を信じることが大事

未来に誇れるような道を作ることができるかが大切なことだと思います

ASUKA:「自分を信じて!」と声を大にして言いたいです。日本は石橋を叩いて渡るというか、何事に対しても安全で安心というような風潮があります。これは日本が、世界でも最も安全な国になった理由の1つだと思います。その反面チャレンジスピリッツが失われているような気がしてなりません。

ネット社会になって、批判が生まれやすい風潮にもなりました。日本は長期的なデフレにより所得は抜かれ、さまざまな産業も他国に追いつかれ、追い抜かれました。日本人の自信は失われつつあると感じますが、問題はそのプライドを保つための糧が、「過去の栄光にすがる」ことになってしまっていることです。過去を誇ることはすばらしいことですが、それは過去のことであり、過去の偉人たちが作り上げたことなのです。

今、そして未来に誇れるような道を作ることができるかが大切なことだと思います。中には足を引っ張る人もいます。あのイチロー選手にさえ悪く言う人がいるのですから。私にはまったく理解出来ません。私も、つねに批判されてきました。しかし、現実はどうなったでしょうか。批判されていた私が女子レスラーとして初めてWWEにスカウトされました。私はこの結果は、ほかの人の言葉をいっさい気にせず自分自身だけを信じていたからだと思います。他人のネガティブな言葉に惑わされず信念を貫き通すことが大切だと思います。

常見:ありがとうございました!

ASUKA選手に学ぶべきことは何だろうか。前例にとらわれないこと、自分をプロデュースすること、自分の居場所をとりにいくこと(場合によってはつくること)、批判に負けないこと、何よりも自分を信じることだ。ジャンルに関係なく、トップを走る人の想い、志を感じて欲しい。

(撮影:梅谷 秀司)

常見 陽平 千葉商科大学 准教授、働き方評論家

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つねみ ようへい / Yohei Tsunemi

1974年生まれ。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。同大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。リクルート入社。バンダイ、人材コンサルティング会社を経てフリーランス活動をした後、2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師に就任。2020年4月より現職。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など著書多数。

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