偏差値30台のヤンチャを甲子園児に育てる男

大人が高校生を指導する意味

「凡才が天才にならんでええんですよ」

県立の北大津高校には、中学時代から注目を集めるようなプロ候補生はまずいない。関西には大阪桐蔭や履正社、智辯和歌山ら私学の強豪がひしめき、青森の光星学院や東京の日大三高などに野球留学する高校生もいる。北大津を志望する中学生も概して野球の腕はあるが、決して神童と言われるような選手ではない。

学校の偏差値は30台後半で、生徒はいわゆるヤンチャ坊主ばかりだ。だが、宮崎とともに考えて野球をすることで、卒業する頃には見違える人間になっていく。

「3年間ここで野球をやって、卒業して出て行きおって、また顔を見せにくるとものすごくしっかりした子になっている。しっかり受け答えのできる、いっぱしの社会人にね。ここは更生所みたいなところです。ええ言葉でいうと、僕が導いていく。悪い言葉でいうと、たぶらかしていく(笑)。卒業するまでに、みんな、ちゃんとしますね」

宮崎に「凡才がトップに登り詰める方法」を聞いてみた。

「凡才が天才にならんでええんですよ。凡才を極めたらいい。亀がうさぎになる必要はない。亀を極める。何かに変わろうとしても無理だから」

ゴルフ場に務める生徒の親からプレゼントされたカートに乗り、グラウンドを駆け回りながら高校生を教える宮崎は誰よりも楽しそうだ。そこに、北大津の誇る強さの秘訣がある。

「監督が楽しくなかったら、絶対に選手も楽しくないやろうし。若い子に『夢や希望を持て』『あきらめるな』といっても、大人があきらめていたら、子どもがあきらめないのは無理ですよ。僕は、毎日楽しい」

不幸にも理不尽な指導者と出会った場合、自ら命を絶つまでに追い込まれる高校生もいる。しかし、尊敬できる指導者に出会えれば、凡才でもトップを目指す方法を学ぶことができる。

高校生を教える指導者の責任は、極めて重い。

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