仕事で失敗を犯したとき、人は力量を問われるものだ。予期せぬピンチを迎えた場合、どうやって切り抜けるのか。自分に原因があるなら、反省して二度と繰り返さないようにするのは当たり前だ。そうやって人は仕事の能力を高めていく。
では、その失敗が不可抗力によるものの場合、どうだろうか? 足を引っ張った部下や間違った指示を送った上司に責任の所在を求め、「自分のせいではない」と考えるのは必ずしも悪いことではない。それが“他責”という考え方だ。失敗を引きずるくらいなら、人のせいにしてパッと切り替えるほうがマシと考えるのは、確かに一理ある。
しかし、トップに登り詰めるプロ野球選手は、失敗を人のせいにしない。その原因が不可抗力によるものであった場合でも、だ。
ケガは誰の責任か?
大学からプロに入って2年目の昨季、埼玉西武ライオンズで外野を守る秋山翔吾は大きく飛躍を果たした。107試合に出場し、リーグ6位の打率2割9分3厘を記録。シーズン序盤は5番を任され、勝負どころの終盤には2番で起用された。
一方、1年目より落とした数字がある。ルーキーイヤーには110試合に出場したものの、2年目には107試合とグラウンドに立つ機会がわずかに減った。2年目にチームにおける存在感を大きくしたにもかかわらず、出場試合数を減らしたのは開幕前、シーズン途中と左太ももに2度のケガを負ったからだ。
昨季終了後の秋季練習で、秋山はこう話している。
「同じケガを何度もしてはいけませんよね。ケガに強い選手は首脳陣から信頼を得られます。『ここで』という勝負どころでチームにいないと、信頼を得られない。成績が落ちて外れるのとは違います。今年は2回ケガをしました。それでチームに迷惑をかけた」
「プロ野球選手にケガは付きもの」と言われるように、負傷は避けられない部分がある。しかし、それでも秋山は自身を責めた。その考え方にこそ、大卒2年目にしてトップ外野手の仲間入りを果たすことができた要因がある。
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