ユニクロの剛腕ママ店長、”前例”の作り方 夫の海外転勤でも、もう負けない

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その結果、事件はやんだが、この時改めて、増沢さんは自分の仕事ばかりに追われるのでなく、スタッフとコミュニケーションする機会を増やすことの重要性を実感したと言う。

そして、現在。増沢さんは、昨年からレイアウトの全社計画の作成、店舗への売り場指導などを行う本部のIMD部に異動。第2子を妊娠・出産したのを機に、育休を取得中だ。

今度は、夫の転勤でも諦めない

そして、今また、「夫の転勤」という転機に遭遇している。しかも、その転勤先は遠く日本を離れ、台湾だというのだ。

「来年4月の職場復帰を目指していますが、できれば、家族そろって暮らすために、夫と同じ台湾の職場で働きたい。そのため、中国語のレッスンも始めています。会社に、海外で子育てしながら夫婦で働く前例はありませんが、だからこそ前例を作っていきたい。会社にとっても、ユニクロの思想をグローバルで指導できる人材は必要だと感じています」

増沢さんの話を聞いていると、「やりたいこと」を会社にきちんと伝えることが、ワーキングマザーを続けるためにいかに重要であるかがわかる。

とはいえ、ウチは福利厚生が行き届いた大企業や役所じゃないから、働きながら子育てなんてとても無理……と決めつけ、両立をあきらめてしまうワーキングマザー予備軍は多い。

だが、会社の大小にかかわらず、産休・育休取得は法律で定められた当然の権利だ。05年からは一定の基準を満たせば、パートタイムで働く女性でも、産休・育休の取得が法的に認められるようになった。特定の復帰支援策が会社になくとも、会社や上司と交渉すれば融通を利かせてもらえる可能性はある。

「ただし、わがままや権利の主張だけでは絶対にダメ。自分だけ特別扱いしてもらおうなんていうのは、論外です。会社に、育児との両立支援を交渉するときは、『その代わり、私はこれだけの成果を出します』と言えるくらいじゃないといけないと思います」。

「ワーキングマザー店長」の”前例”を作ってきた人だけが言える、説得力ある言葉だ。

(撮影:今 祥雄)

 

 

 

 

 

佐藤 留美 ライター
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