10歳、6歳、1歳の3人の男の子を育てながら、都内の大手酒量販店チェーンの営業担当として、第一線で働く――。
「ワーキングマザー・サバイバル」が最初に直撃したワーキングマザーは、初回にふさわしい“ハードワーキング・マザー”だった。
サントリーの酒類の量販店営業を手掛けるサンリーブ東京事業所で、営業を担当する垣上有さん(34歳)。
サントリーが製造・販売する洋酒や焼酎、チューハイ飲料などを酒量販店が持つ都内店舗に営業する。
各店舗をエリア営業するのは、主にMPさん(マーケティング・パートナー)と呼ばれる専門スタッフだが、担当するチェーンの納品、売り上げ、年間予算に責任を持つのは、垣上さんと26歳の若手男性社員の2人だけ。商談に使う資料や市場データ、店頭販売促進用のPOPの作成といった煩雑な作業も業務の1つだ。
垣上さんは小学生と保育園に通う息子3人のお迎えの都合上、夕方4時半には仕事を終えなければならず、時短勤務中だ。夫婦ともに関西出身の垣上さんは、近くに頼れる親兄弟がおらず、子どもを簡単に預かってくれる相手もいない。そんな状況だから、日中はそれこそ目が回るほどの忙しさだ。
「今年4月、3男を0歳児保育に預けて復帰したときに営業への異動を告げられ、ものすごく驚きました。しかも、私の前任者は30代後半のリーダークラスのバリバリの男性だったと聞き、正直、私には無理なんじゃないかと。
最初のうちは、やることは山積みなのに、メールの処理もできずたまるばかり。焦る一方で、初めて会社を辞めたいとさえ思いましたね(今はそんなことないですが……)」
垣上さんがそう思ったのも無理もない。当時33歳にして初めての営業。しかも社用車での営業で、関西出身で千葉在住の垣上さんは、首都高速が入り組む都内を運転したこともない。MP(営業専属スタッフ)の営業推進や管理も重要な業務だが、マネジメントの経験もない。
「自分が積極的に店舗を回らなければ、こういうふうな飾りつけで、こんな具合に売ってくださいと人に指示を出すこともできない。でも、最初は怖くて首都高速にも乗れず、一般道でやたらめったら時間をかけて営業先に行ったり、MPの皆さんからの資料を読む時間もロクに取れないなど、本当に仕事がパンクしていました。半年経って、やっと自分の仕事の“型”ができてきましたね」
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