垣上さんの型とは、仕事に思い切り優先順位を付けることだ。
「自分が会議のスピーカーとなる立場になって初めて、ミーティング資料はそう何枚も用意する必要がないと気づいた。また、会社は販促の手法をいろいろと提示してくれますが、自分のチームに必要なものだけを選択すればいいのだと割り切れるようになった。結局、仕事が破綻するのは、自分の心配しすぎが原因なのだと悟りました」
入社2年目の母に生まれた″覚悟″
やるべきことの優先順位を付け、いらない物はバッサリ捨てる。商談や会議の資料は、短時間で集中して作る。報告書類は移動中に見る――。垣上さんは、そんな“時短仕事術”を、実は入社後の早い段階に身に付けていた。
というのも、垣上さんは入社2年目の6月に早くも母親になり、翌年8月には復帰。24歳にしてワーキングマザーになったため、仕事と育児の両立は今に始まった話ではない。仕事の要領、集中して成果を出す技術は心得ている。
「入社早々に育休を取得し、復帰後も子どもの保育園お迎えのため6時には退社するので、会社には迷惑をかけたという気持ちが強かった。だから、人一倍働こうと決めました。
時間があるとついついやってしまう余計な調べものは一切せず、エクセルやパワーポイントの技術を磨いた。上手な先輩の技をまねるだけではなく、社内のプレゼン研修に参加したり、情報サポートデスクにしょっちゅう電話しては『これとこれを、いっぺんにやるにはどうしたらいいですか?』なんて聞きまくっていましたね」
ワインの販促担当時は、ワインの知識がないことには取引先や営業担当者とスムーズに話ができないと、「ワインアドバイザー資格」を取得。乳児を抱えてフルタイムで働きながらの資格取得はさぞや大変だったと思うが、垣上さんは「勉強しちゃったほうが、あとあと仕事が楽になるから」と屈託ない。
それでも、日本の会社は長時間労働をよしとする傾向がある。ましてや酒造メーカーのサントリーなら、飲み会も多いはず。飲み会でのちょっとした会話で、仕事が有利に働くこともあるが、その点、早帰りが基本のワーキングマザーはがぜん不利だ。ところが、垣上さんは、「飲み会出席」も諦めない。
「元々、飲み会が好きだし、お世話になっている方が主催する飲み会に行かないという選択肢は私の中にはないんです」
ただし、飲み会参加にも「2つの壁」を突破する必要がある。住んでいる市の「ファミリーサポート」に頼んで保育園終了後の子どもを預かってもらうのと、そこへの子どものピックアップを夫にお願いすることだ。
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