このコラムに何度か登場しました親友の順子さんは、新婚早々から夫にしかられ続けました。たとえば一度深夜に、リンゴの皮を剥かされたときのことです。手の洗い方が簡単すぎたのか、無香料だったそうですが化粧水の香りがリンゴについていたそうです。それで激怒した彼はリンゴを投げつけて出て行きました。その後、生涯、彼女が食べ物を触るときには、「手を洗ったか、もう一度自分の目の前でせっけんで洗え」という決まり文句がついたそうです。
廊下の隅にホコリを見つけようものなら、「2畳一間の部屋なら管理できるのか? 引っ越してほしいか?」と激怒。順子さんがピリピリして家事をこなし、「今日は完璧だ」と思った日の料理には、テーブルクロスが昨日と同じだと激怒したとか。一事が万事で、いつも苦虫を噛み潰したような顔をしていたそうです。
一日中こんな調子ですから、順子さんは気が休まりません。世間知らずな彼女の子育てが一段落つき、友人や親戚の家庭事情を知るに至ったとき、彼女はショックを受けました。「世の中の主婦は、なんて家族に大切にされ、笑って生活しているのだろう! 自分は普通の家なら笑って済むことに、なんと大げさにしかられ続けてきたのだろう」と。これに複雑な人間関係が絡むと、それはもうお話になりません。「言葉で殺され続けた」日々だったそうです。
夫の厳しさが彼の性癖ではなく、自分に愛情がなかったからだと気づいたときには、時すでに遅しだったと言います。
夫の暴言は一生続くことを前提に選択しよう
優子様、ここであなたが望んでおられる選択は、順子さんがたどった道です。我が友、順子さんの気苦労を知る人はみな、自分なら絶対に耐えたはずがなかったつまらない結婚生活だと言います。自分を安売りしすぎたと順子さんをバカにする人もいます。順子さんも時計の針を戻せるなら、返してほしくてたまらない人生だと言います。家庭が針のむしろなんて、全人生を奪われたも同じですからね。
むくわれるのは半世紀後のこと
順子さんによると、5年目よりは10年目というふうに、しかられる回数は減るのだそうです。それは夫の性格が丸くなったからではなく、先回りして夫の機嫌を損ねないように順子さんが、気働きできるようになったからです。つまりますます順子さんの神経は、張り詰める一方でした。しかし順子さんと夫君の力関係は、還暦を過ぎた頃から時々逆転することもあるそうです。優子様、半世紀後に結果少し良ければすべて良しなら、順子さんを参考になさってください。
間違ってもあなたの哀訴やショック療法で、ご夫君が変わるなどとは期待しないことです。
もしくはこれからの長い年月を、言葉で殺され続けるのは真っ平ごめんで、人並みに家族から大切に扱われ、互いを思いやる家庭で人生を歩みたいとお考えでしたら、別の選択をなさるべきです。
今あなたは妊娠中で無職で大変な時期かも知れませんが、いろいろな人の助けを借りて今を乗り切り、子どもを産み仕事を持つ人生も、あなたには十分用意されていると思います。
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