トヨタが雇った再建屋は日立出身のセールスマン 名古屋グランパスGM・久米一正【上】
名古屋グランパスは、これまで「経営下手」なクラブの代表例だった。おカネがないわけではない。スポンサーであるトヨタ自動車とその関連企業からの支援金は毎年約20億円。選手への勝利給はJリーグトップの推定70万円に上る。にもかかわらず、チームの順位は“万年中位”。結果がついてこなかった。
だが昨年、グランパスはついに長年の停滞感を吹き飛ばす。
その中心人物となったのが、日立製作所出身の久米一正ゼネラルマネージャー(GM)だ。柏レイソル、清水エスパルスで次々と結果を出した敏腕GMである。
昨年、久米がストイコビッチ監督とともにグランパスに迎え入れられると、チームはJリーグで3位に大躍進し、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)の出場権も手にした。グランパスは“万年中位”から抜け出す第一歩を踏み出したのだ。
なぜ久米は、トヨタでも強くできなかったクラブを再生できたのだろうか? そのヒントは、日立のサラリーマン時代にある。
人生を決めた母親の一言
GMとしての地位を確立するまで、久米の人生には三つのターニングポイントがあった。
一つ目の転機は、高校卒業時に訪れる。母親の女手一つで育てられた久米は、家計を助けるために、高校卒業後は地元の実業団に就職しようと考えていた。幸い地元・静岡にはヤマハ発動機とホンダという名門があり、浜松高校のキャプテンとして注目されていた久米の元には両チームからオファーが届いた。
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