地味な顧客の深堀に汗をかけ
「使用用途の拡大」。これは既存顧客の深掘りには欠かせない要素だ。経済学者のイゴール・アンゾフが提唱した「アンゾフの事業拡大のマトリクス」は既存の顧客・市場を狙うor新市場を開拓する、既存製品で勝負するor新商品を開発する、という展開の掛け合わせで、事業展開を4象限で整理している。その中で、カリスマ的な経営学者マイケル・ポーターが検証した最も手堅い展開が、実は既存製品で既存市場・顧客を深掘りするというパターンである。
マーケターとしては、事業の成長を望むばあい、ついつい新たな市場や顧客層に食指を伸ばしたり、新商品で勝負をかけたりしたくなる。「既存の深掘り」は少々地味に感じるのだろう。だが、そこにどれだけ汗をかけるかで、勝負は決まってくる。
例えば「宅配便」。単純に荷受けをして、指定された先まで荷物を運ぶというサービスであれば、今日のような発展はなかった。指定時間にキッチリ届ける。ゴルフ場やスキー場への道具の運送を行い、復路も手間なく確約する。冷蔵や冷凍が必要な荷物を運ぶ。代金の支払いを届け時に受け付ける……。「運ぶ」という主たる役務提供に付随したサービスで、顧客ニーズを深掘りしたのだ。
サッサッという軽妙なお茶漬けのサウンドロゴの影にある、コツコツとした需要の深掘りを図る永谷園の展開。地味なことに汗をかく大切さを、思い出させてくれた。
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
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