「YOSOOU(粧う)」。この和風な名前は、この冬2シーズン目を迎えたダウンウェアのブランドだ。と言ってもYOSOOUは、いわゆる“ダウン”、つまりダウンフェザーを入れたジャンパーを多色展開で看板にしているカジュアルブランドとは、ちょっと色彩が異なる。YOSOOUは、ジャケットだけでなく、トレンチコートからスカートやドレス、それにボウタイまですべてダウン入りという商品展開をしている「何でもダウンで作る」ブランドなのだ。
売れる仕組みを「4P」の分析
昨冬。誕生したばかりの「YOSOOU(粧う)」は想定外に売れたという。同ブランドの売り物はダウンだけなので、展開は秋冬のみ。百貨店を中心に13回のリミテッドショップと全国15店舗のセレクトショップへの展開で1億3千万円の売上記録。アパレル冬の時代においては大健闘と言っていい。今年はさらに規模を拡大し、百貨店・セレクトショップなど26カ所30回のリミテッドショップで3億円の売上を見込んでいるという。
YOSOOUブランドの「売れるしくみ」「稼ぐしくみ」は明快だ。マーケティングの基本フレームワーク「4P」に則って整理してみよう。
「Product(製品)」は、「Dual Flex」というダウンには珍しい伸縮性のある生地を開発し、使用している。それによって、ダウンウェアにありがちなガッチリした着ぶくれシルエットではなく、身体にフィットした「街着」として違和感のないスマートなスタイルに仕上がっている。それだけではなく、伸縮性素材は「体型を選ばない」というメリットも生んでいる。
YOSOOUを展開する株式会社パブリックスペース・永嶌大輔社長によると、YOSOOUは、「家族全員が着回せる服。年齢や体型を選ばない服を目指している」のだという。同社カタログや Webサイトを見ると、様々な一般人モデルがYOSOOUのダウンを楽しげに着回している様子が掲載されており、印象に残る。それを、気に入ったら誰でもそう無理なく手に入れられる「Price(価格)」設定として、3万円台~4万円台を中心に展開している。
高品質の製品を比較的押さえた価格で提供する下支えとして「Place(販売チャネル)」は期間限定のイベントショップを中心とし、固定費を抑制。これは、少数の直営店で「点」の展開をするのではなく、各所に露出して、「面」でブランドの世界観を表現する方針と一致している。
マス広告を打たない独自戦略
また「一過性ではなく3年、5年と年を重ねるごとに徐々に浸透していくブランドでありたい」(永嶌社長)と、マス広告を打たず、口コミやパブリシティーを中心とした「Promotion(販売促進)」を取っており、このことも同時にコスト削減を実現している。
筆者がユニークに思うのは、一般にはまず、ターゲットとなるユーザー像を決め、そこに4Pを整合させていくところ、同社が「ターゲットをあえて絞らない」(永嶌社長)戦略を打ち出した点にある。これは言うは簡単だが、まかり間違えば全ての施策が総花的にもなり、相乗効果の見込めないものにもなりかねず、存外に難しい。
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