一度軌道に乗った製品は、導入期、成長期、成熟期、衰退期の「製品ライフサイクル(Product Life Cycle)」を経る。そのサイクルの中で、衰退期に転落しないように成熟期で踏みとどまるという課題を抱えた商品は市場にも多く存在する。
オフィスでお馴染みの糊付き付箋製品「ポスト・イット(R)」も例外ではなかった。発売来31年のロングセラーは、生き残りのため、いかなる挑戦をしているのだろうか。
まずは市場浸透と新製品開発から
経済学者のイゴール・アンゾフは、企業の事業拡大の方向性を4つにパターン化した。いわゆる「アンゾフのマトリックス」だ(右の図を参照)。既存の顧客/市場を対象にするのか、新規の顧客/市場を狙うのか。既存の製品を用いるのか、新製品を開発するのか。顧客/市場・製品、新規・既存の掛け合わせの4つだ。
米国ミネソタ州に本拠を置く3M(スリーエム)社は、優れた技術力を基盤に、電気電子・建築・ヘルスケアなど多彩なチャネルに向かい、次々と新製品を送り出すことで知られている。「経営戦略としても、全売上の40%以上を直近3年間で出した新製品が占めなければならないという目標を設けている」(『利益思考』グロービス・著、東洋経済新報社・刊)という。
アンゾフのマトリックスで示せば、既存顧客に新製品を販売するという「新製品開発」戦略を全社的に推進していると言っていい。
一方で、既存の顧客に既存の製品を販売する「市場浸透」戦略も怠っていない。例えば今回掲題のポスト・イット(R)製品で言えば、大容量バリューパックを作ったり、多様な色の組み合わせのパッケージを展開していたりする。
また、素材を紙よりも目立ち、より丈夫なフィルム素材に変えた「ポスト・イット(R) ジョーブを」展開したり、テープ状のロールタイプにした「ポスト・イット(R) 強粘着ロール」を発売していたりもする。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら