トヨタはなぜ、キレたのか?《それゆけ!カナモリさん》
■過熱するハイブリッド市場
ホンダ・インサイト対トヨタ・プリウスの戦いが激化している。それもあり得ないぐらいの激しさで。百獣の王ライオンはどんな獲物でも全力で斃すといわれるが、圧倒的な力を持つトヨタの、ホンダ・インサイト叩きは異様な様相を呈している。確かに、3代目プリウスの発売に先行して、ホンダ・インサイトは絶好調ともいえる受注状況になった。それに対し、トヨタは常識では考えられない手段をとった。旧型となる2代目プリウスを40万円以上も大幅値下げして販売を継続。さらには、新型の3代目プリウスの最低価格を極めて低廉に設定した。
消費財などの場合は、大きなシェアを持つリーダー企業が、当該カテゴリーにチャレンジャーが参入してきた時、その出鼻をくじくため、発売のタイミングでキャンペーン的に値引きをすることはある。このコラムでも以前、キリンビバレッジ「潤る茶(うるるちゃ)」と日本コカ・コーラ「爽健美茶」の戦いを紹介した。
しかし、一度購入してしまえば反復購入が望めない耐久消費財である自動車で、一過性のキャンペーンではなく、定価そのものを引き下げるというのは、筆者は聞いたことがない。トヨタが、ハイブリッド車市場を一部たりとも明け渡す意志のない現れだろう。
価格の問題だけではない。ダイヤモンドオンラインの記事「業界騒然!ホンダ「インサイト」をコケにする トヨタ「プリウス」の容赦ない“比較戦略” 」は、トヨタの凄まじい意志が伝わってくる。
■虎の尾を踏まれたトヨタの反撃
記事によると、2009年5月18日にメディア向けに行われたプリウスの発表会において、寸劇と配付資料で、ホンダ・インサイトという明示はしないものの、明らかにそれとわかる内容でトヨタのプリウスとの比較を行ったというのだ。トピックボードAD
有料会員限定記事
キャリア・教育の人気記事