本好きのためのマンション?《それゆけ!カナモリさん》
本好きのためのマンション?
モノが売れない。不景気で消費者の財布の紐が固くなっただけでなく、その前からとっくに消費は飽和している。そんな環境下では、どんなターゲットを狙っていくのかが極めて重要だ。ターゲティングがしっかりしていなければ、どんな商品に仕立てていくのか。そしてその魅力をどのように訴求していくのかというポジショニングもあいまいになってしまう。それではモノは売れない。
しかし、今でも時々耳にするのは、「ターゲットを絞りすぎては、ヒットする人が少なくなってあまり売れなくなってしまうじゃないか」との論だ。高度成長期の誰もが同じモノを求めていた時代ならいざ知らず、消費者ニーズが細分化した今日において、誰からも支持されるモノ作りはもはや幻想だ。
「これなら絶対欲しい!」「これしかいらない!」。そんな熱狂的なファンを作って売るモノ作り。多少極端なモノでも、それを買ってくれる人がいればいいではないか。
好例がある。東京・月島に新築された「本棚のついているマンション」。
とかく収納スペースが居住空間に優先され、物の置き場に困るマンション。それが一般的な商品だといっていい。趣味の道具やコレクションなどを収納するスペースの優先度は極めて低く、買った本とは、次々とブックオフへと涙の別れを繰り返すこととなる。
そのマンションは、玄関を開けると廊下の壁一面に天井までの本棚が作り付けられている。本好きには垂涎だろう。それだけでなく、オーダーすればリビングや書斎にも作り付けの棚を設置できるという。
ポイントは、そんな本棚だらけのマンションを誰が欲しいと考えるかだ。広告クリエイティブ・デザインの専門誌「ブレーン」で紹介された記事中に、以下のような記述があった。ターゲットは本好き。文化的な暮らしに興味のある人。活字が好きな人。既に月島を気に入って住んでいて、新居を探している人。
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