グローバル人事の「目」(第6回)--海外拠点で「価値観」を浸透させる極意とは?
◆自社の価値観を海外で浸透させるのは難しい
海外現地法人が増えてくると「日本本社の『価値観』をグローバル全体に浸透させて、一致団結したい」ということがテーマになる。そこで、日本本社の価値観を明文化して、海外拠点で説明会などを行うようになる。
しかし、説明会の場で海外現地法人の社員が「わかった」と言っても、本社や駐在員の目から見ると「わかった」ようには見えないことが多い。本社役員自ら海外現地法人に出向き、自らの言葉で直接価値観を伝えたり、カードや冊子にまとめて配ったりするなど、繰り返しコミュニケーションをとっても結果は大きく変わらない。
最近、「価値観を海外現地法人に浸透させるのに何かいい手はないですか」という相談を受ける機会が増えている。
実際にその会社の価値観を文章化した資料を見ると、どの会社も共通して「我社の価値観を体現した行動」で価値観を表現している。一見正しいようであるが、実はそこに落とし穴がある。
自社の価値観を行動で表現すると、当たり前の内容になってしまうのだ。
例えば「インテグリティ(誠実さ)」は重要ですと言われれば、その通りですと理解してくれる。しかし、具体的に現場行動にそのキーワードを落とし込もうとしても、どの会社にも当てはまりそうな一般的な「べき論」に陥り、自社らしい行動に結び付かない。