日高屋の「分かち合う資本主義」徹底解剖。「家でつくるより安い!」ギリギリ価格で提供し地域に貢献+社員には赤字でも「3回目のボーナス」支給

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野菜炒め
女性客に喜ばれているという、日高屋の野菜炒め470円。国産野菜を300g使用しており、そのシャキシャキ感とオイスターソースの濃い味わいにごはんが進む(撮影:美紀 悠子)
コロナ禍、2年で約60億円の赤字を出した『熱烈中華食堂日高屋』(以下、日高屋)。しかし、年2回のボーナスと「成長分配金」を欠かさなかったという。コロナ禍だけでなく17年間、ずっとだ。しかも、この5年間は毎年賃上げを実施。それでも「中華そば420円」の低価格を守っている――。
84歳創業者・神田正会長の「分かち合う資本主義」を受け継ぐ青野敬成社長が語る、年商1000億円への道筋と社会インフラとしての使命とは。
ライター・編集者の笹間聖子さんが、誰もが知る外食チェーンの動向や新メニューの裏側を探る連載「外食ビジネスのハテナ特捜最前線」。
第17回は日高屋の根幹にある「分かち合う資本主義」を紐解く。
【あわせて読む↓↓前編】
「サラリーマンの天国」日高屋に高齢者が殺到する"異変"? 《420円中華そばで年商600億円の凄み》「ちょい飲み発祥店」、変化のワケを深掘り

赤字60億円でも貫いた「3回目のボーナス」

多くの企業は年に2回ボーナスが出る。しかし日高屋には「3回目の」ボーナスがある。毎年2月に支給される「成長分配金」だ。2022年2月期の決算から支給されはじめたが、実は名前を「決算賞与」から変えただけ。2008年から17年間、1年も欠かさず支払われてきた。

「年に27億、35億と、2年連続赤字だったコロナ禍もずっと渡していました。通常、成長分配金は、目標としていた利益額を超えた分をすべて従業員に還元する形を目安に支給していますが、コロナ禍は当然目標を超えることなどできなかった。だから内部留保から少額ですが出しました」

運営会社であるハイデイ日高の青野敬成社長は、そう苦しい時期を振り返る。

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日高屋
コロナ禍は人通りが途絶えたが、今は客がひっきりなしに訪れる新橋日比谷口店(写真提供:ハイデイ日高)※画像の一部を加工しています

60億円赤字でも、成長分配金を払い続けたのはなぜなのか。そこには、創業者の会長、神田正さんから受け継ぐ信念がある。

「事業をやるからには、企業が成長するだけでなく、その成果を社員にも還元すべき」という、「分かち合う資本主義」と呼ばれる考え方だ。

喜びも苦しみも従業員と分かち合う。儲けた分は還元する――。だから、誰もがしんどいコロナ禍こそ、支給して社員を支えたのだ。「決算賞与」から「成長分配金」に名前を変えたのも、その信念を社員に伝えるためだという。

【写真】日高屋を徹底解剖!料理や店内の様子など(9枚)
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