「都内絶滅寸前の大衆演劇」「15円のチキンボール」「億ション」がある23区の"カオスな街"の知られざる実態

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笹川さんはメガネ作りに関する国家検定資格「1級眼鏡作製技能士」の有資格者だ。当然だけれど、メガネ作りに対する想いは深い。

「十条銀座商店街は、うちみたいな個人店がわりと多く残っているんです。こうした商店街のいいところは、お客さんの顔を見ながら商売ができること。人の顔ってそれこそ十人十色です。度数は合っていても、ちょっとしたズレで見え方に違いが出てくる。チェーン店でメガネを作ったけれど、何だか違和感を覚える、という人は”メガネはこんなものだ”と諦めずに、私たちのような職人のいるメガネ屋を訪ねてみてほしいですね」(笹川さん)

メガネ ササガワ
「メガネのササガワ」外観(筆者撮影)

住むにも商売をするにもいい街

笹川さんが続ける。

「私も3代目ですが、十条には頑張っている3代目、4代目の店がたくさんあります。横のつながりも強くて、毎年5月から6月にかけては『ぶらり十条カレー散歩』というイベントが開催されるんです」

十条界隈の70店舗以上が参加する大イベントだ。期間中は寿司屋、居酒屋、ラーメン店、うどん屋など、日頃はカレーを出さない店もオリジナルカレーを作って参戦する。

「”キッチン&バーひ(上十条3-29-5)”と洋食店の”吉良亭(十条仲原2-8-12)”が10年くらい前にカレーの味くらべを始めたのがきっかけなんです。今では街をあげてのイベントになっています。あまり大きくない、程よく小さな商店がたくさん残っているから、こうした横のつながりを作りやすいんですよね。十条は住むにも商売をするにもいい街ですよ」(笹川さん)

かつて旅芸人が居場所を求めてたどり着いた街に、今は外国からも人が集まり、タワマンができたことで新しい住民も増えた。それでいて暮らしの体温が伝わってくる。十条は、“住むとちょっといい街”の王道だ。

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末並 俊司 ライター

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すえなみ・しゅんじ / Shunji Suenami

福岡県生まれ。93年日本大学芸術学部を卒業後、テレビ番組制作会社に所属。09年からライターとして活動開始。両親の自宅介護をキッカケに介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)修了。現在、『週刊ポスト』を中心として取材・執筆を行っている。

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