「都内絶滅寸前の大衆演劇」「15円のチキンボール」「億ション」がある23区の"カオスな街"の知られざる実態

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十条駅を使えば池袋駅まで約6分、赤羽駅まで約3分だ。東十条駅を使えば上野駅まで約15分、東京駅まで約24分と、どこに行くにもアクセスがよい。また、近隣のどの駅よりも物価が安いと十条の住民たちは口をそろえる。

足立健次さん
「リビングショップ カネスズ」店主足立健次さん(筆者撮影)

「十条駅前にはタワマンもできたしね。反対運動もあったけど、今後は街のシンボルになってくれるんじゃないかって、期待していますよ。あのマンションのおかげもあるのか、最近は若い世代の新しい住民も増えてきたしね」(足立さん)

電気店、書店、メガネ店がある商店街は元気

店は戦後すぐに足立さんの父が始めたのだそうだ。店内には鍋、ヤカン、包丁やハサミなどの刃物類が並ぶ。足立さんはそれらを整理しながら続けた。

「父は新潟出身の人でね、海軍に所属していた。終戦で復員したときは手持ちの財産なんかなんにもなかったらしい。それでも生きていかなきゃいけないから、故郷の新潟燕三条から金物を仕入れて売るようになった。ここは私で2代目ということになりますね。燕三条の刃物なんかは、最近は海外から来た人の方が面白がって買っていきますね」(足立さん)

リビングショップ カネスズ
「リビングショップ カネスズ」(筆者撮影)

十条中央商店街(演芸場通り)の中ほどに位置するカネスズを出て、十条銀座商店街に戻る。これまでの街歩きの経験から、個人経営の電気店、書店、メガネ店が残っている商店街は元気がいい、と私は勝手に考えている。十条銀座商店街で、電気店と書店は見つけられなかったが、メガネ店はすぐに発見した。

「メガネのササガワ(北区十条仲原1-4-7)」は創業101年目という老舗中の老舗だ。店主の笹川秀樹さんに話を聞いた。

「戦前は墨田区の業平(押上駅南側の一帯)に店があったらしいんですが、戦争で焼けちゃったので、終戦後にここに越してきたようです。創業時は時計店だったのですが、その後に宝石とメガネも売るようになった。つい最近まで時計も扱っていたのですが、現在はメガネだけです」(笹川さん)

笹川秀樹さんと奥さんの幸子さん、看板犬のあんちゃん
笹川秀樹さんと奥さんの幸子さん、看板犬のあんちゃん(筆者撮影)
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