誰もいなくなった実家は父親のモノであふれかえっているが、「いつかここに帰ってくるから、モノは置いといてくれ」と男性は釘を刺されている。父親を説得することは、結局できていない。
それでも、施設から帰ってくる見込みがない以上、そのままにしておいても仕方がない。男性は意を決し、イーブイに実家の片付けを依頼した。
「いつか使う」が口癖だった父親
この家の居住スペースは2階と3階にある。玄関から階段を上がった先の2階が、リビングとキッチンになっている。
キッチンに入ると、生ゴミが散乱しているわけではない。だが、収納に収まりきらなかった調理器具や食器に生活雑貨が、床や作業台、あらゆる空いたスペースに所狭しと置かれている。リビングには、推定50キロはあろうかという古い金庫が鎮座していた。
壁も例外ではない。カレンダー、スーパーのチラシ、額に入れられた賞状、掛け軸、そして阪神タイガースの記念タオルや旗。わずかでもスペースがあれば、何かを掛けておく、あるいは貼り付けておく、といった状態だ。
隣の寝室には、今回の片付けのために依頼主の男性がまとめた、衣服などの不用品が入ったビニール袋が何十個も並べられている。
父親はとにかくモノを大事にし、捨てられない人だった。男性が振り返る。
「よくある『いつか使うから置いておく』というパターンですね。私もときどき片付けに来ていたんですが、親父は『とりあえず置いといてくれ。いつかは使う』と。かれこれ20年近くになります」
男性が片付けようとしても、父親がそれを止める。その繰り返しだった。
「結局ね、片付けてもまた買うんですよ。ただ、全然使っていない、開けてもいないモノもあると思うんですよ。とにかく後で使うやろって。でも大事にはします。だからこんなモノも残っているんですよね」


















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