「不機嫌=ハラスメント認定はやりすぎ」誤解されがちな「フキハラ」との正しい付き合い方

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しかし、法的にハラスメントではないからといって、不機嫌が職場に与える影響を軽視してはならない。不機嫌な人が職場にいると、周囲の生産性は確実に下がる。

これは感覚的な話ではなく、世界的な研究で明らかになっている事実だ。たとえば組織心理学の研究では、チーム内に感情的に不安定なメンバーが1人いるだけで、チーム全体のパフォーマンスが最大30%も低下するというデータもある。

人間の脳は、他者の感情を敏感に察知するようにできている。誰かが不機嫌だと、周囲は無意識にそれを感じ取り、気分が沈んだり、緊張したりする。いわゆる「感情伝染」だ。不機嫌な上司や同僚がいれば、報告や相談をためらい、結果として情報共有が滞り、協力体制が崩れ、ミスが増える。これは感覚論ではなく、科学的に証明されたリスクなのである。

なぜ人は、感情をコントロールできないのか

たとえば、こんなケースを考えてみてほしい。

ある女性社員は、子育てと家事のほぼすべてを1人で担っている。夫は「わかった、わかった」と言うだけで、何も手伝わない。ある日、彼女が残業で遅く帰宅すると、両親に託した子どもの迎えにも行っておらず、夕食の片付けもされていない。シンクには汚れた皿が山積みだ。

翌朝、彼女は早起きして片付けながら、涙が出そうになった。

そのまま出社し、上司が妻への愚痴を話しているのを耳にする。「うちの妻はいつも文句ばかり言ってさ」——そんな言葉を聞いて、彼女の中で何かがプツンと切れた。

この状態で、笑顔で「おはようございます」と言えるだろうか。

よほどの聖人君子でない限り、無理だ。こうした感情を「ハラスメントだ」と断じてしまっていいのか。私はそう思わない。

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