では、上司として不機嫌な部下にどう接すればいいのか。最もやってはいけないのは、論破しようとすることだ。
「君が不機嫌だと、周りの士気が下がる。それがどれだけ迷惑か、わかっているのか?」
こんなふうに正論をぶつけても、相手はますます心を閉ざすだけである。自分でもその状態を持て余し、苦しんでいることが多い。そこに正論をぶつけるのは、火に油を注ぐようなものだ。
相手の立場に立って考える——これができていない上司は、部下との信頼関係を築けない。
心理学には、「ライフイベント」と「デイリーハッスル」という概念がある。
ライフイベントとは、結婚、出産、転職、引っ越しといった人生の大きな出来事を指す。これらは予測しやすく、周囲も配慮しやすい。
一方デイリーハッスルとは、日々の小さなストレスのことだ。
(2)家族とのちょっとした口論
(3)週末のソフトボール大会での怪我
こうした小さなストレスは、一つひとつは些細に見える。しかし積み重なると、ライフイベント以上に心身を消耗させるようだ。研究によれば、デイリーハッスルの影響は、ライフイベントよりも大きいとさえ言われているのだ。
不機嫌な部下がいたとき、上司はこう考えるべきだ。「この人は今、何かのデイリーハッスルに苦しんでいるのかもしれない」と。そうした視点を持つだけで、接し方は変わる。
相手のタイプを見極める重要性
相手の立場に立つといっても、すべての人に同じ接し方をすればいいわけではない。
私は拙著『わかりやすさよりも大切な話し方』の中で、人を7つのタイプに分類し、それぞれに合わせた話し方を提案した。これは20年以上にわたって延べ200社以上の企業をコンサルティングしてきた経験から導き出したものだ。
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