
涙ながらのセクハラ相談
人事にとって、セクハラ案件ほど神経をすり減らす問題はない。非常にセンシティブな問題でもあるため、被害社員への細やかな配慮が求められる一方、訴えの内容やその真偽についても慎重に調査を進めなくてはならないからだ。
場合によっては刑事事件にもなりかねず、ときに厳戒態勢で臨むこともある。
今から15年前のこと。とあるメーカーに在籍していた際に、生産部門の女性社員Aさん(28歳)から、上司のセクハラについて訴えがあった。
「実は、課長のBさんから何度も食事に誘われたり、私だけ“ちゃん付け”で名前を呼ばれたりして、すごく困っているんです。先日も部署の飲み会で『なんか、いい匂いがするなぁ』と私の髪に顔を近づけてきたので、すぐに逃げました。最近は会社に行くのもつらくて……。何とかならないでしょうか」
涙目で訴えるAさん。ヒアリングに立ち会った私は、「これが事実ならとんでもない。それ相当の制裁を加えなければ」と、怒りでワナワナと手が震えた。しかもB氏(43歳)は既婚者。役職者としても、一人の人間としても未熟すぎやしないかと、呆れかえった。
早速、B氏本人に直接聞くと、しぶりながらも事実を認めた。「私としては親しみを込めただけなんですけどね。でも二度とそのような行為はしませんので」と、浅い反省の言葉。いよいよ“あの人”に登場してもらわねば、と武者震いがした。
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