とはいえ、被害者側の主張だけを鵜呑みにしてもいけない。中立な立場で、事実を捉える冷静な目も必要だ。双方の言い分に食い違いがある場合は、被害者本人の許可を取ったうえで第三者への聞き取り調査を行うこともある。
ちなみに、これは私の経験則だが、セクハラ加害者は家庭に問題を抱えているケースが少なくない。B氏も夫婦関係が見事に破綻していた。家庭での不和が、職場で過度に“癒やし”や“承認”を求めるセクハラ行為へと発展する。これは案外リアルな話でもある。
あるいは、そもそも本人の内面に問題があるために、夫婦間でも職場でもトラブルを引き起こしているとも言える。ただ、いかなる理由であれ、セクハラは断じて許されない。再発防止のため、社内規定の整備やハラスメント研修の実施など、意識改革に取り組むのも人事の重要な仕事だ。
ここで声を大にして伝えたいことがある。悪いのはセクハラをした本人だけとも限らない、ということだ。その行為を容認した周りも、同罪に当たりはしないだろうか。
たとえば、飲み会で上司のセクハラ発言に同調して、一緒になって笑ったとしよう。内心では、笑いたくなくても「上司の手前、笑うしかなかった」「場の空気を壊したくなかった」「飲みの席だし、まぁいいかと思った」。そんな声が聞こえてきそうだ。
その気持ちはわからないでもない。自分もイチ会社員だ。偉い人の気をなるべく損ねたくはない。
だが、そうした発言に心を痛める人もいる。職場全体にセクハラを容認する空気があれば、心を痛めた側は「この職場ではセクハラを訴えにくい。訴える自分のほうが了見が狭いのでは」と、思いとどめてしまう可能性もある。顔では笑っていても、心の中では泣いている。そういうケースは実は多いのではないだろうか。
セクハラ発言に一緒になって笑って済ませたら「同罪」と見なされても致し方ない。とくに人事は社員を守る立場でもあるので、社内の飲み会でも気を抜けないのが実情だ。
もし、職場でセクハラに遭ったら
あってほしくはないが、職場でセクハラに遭った場合の基本的な対処法は以下の通り。加害者本人に直接、抗議できたらよいが、難しい場合も多いだろう。つらいと思うが、粛々と対処してほしい。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら