乳がんを患ったアグネス・チャンさん「あと5年ください」を願った理由――落ち込んだ彼女を救ったインドカレーと店主の何気ない一言

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つい最近、私自身が嬉しくなるようなニュースがありました。スタンフォード大学院時代にお世話になった私の恩師の女性に、新しい恋人ができたんです。

彼女は長年連れ添ったご主人を数年前に亡くされて、しばらくは深い悲しみの中にありました。ちょうど70代後半だったと思います。ご主人のお墓が完成して、偲ぶ会が行われたのは去年のこと。私もその会に参加しましたが、彼女の沈んだ表情が忘れられませんでした。

人は何歳からでもときめきを持てる

その後、彼女はアメリカにあるシニア向けのコミュニティ施設に移り住みました。日本でいうと「サービス付き高齢者住宅」のような場所で、自立した暮らしを楽しみながら、必要なサポートも受けられる、自由度の高い住まいです。

今年8月、母校スタンフォードにて(写真:T&A提供)

食堂やラウンジも充実していて、外出や旅行も自由。そんな落ち着いた環境の中で彼女は少しずつ心を癒やしていたのでしょう。

そんなある日、彼女と親しい知人がこう声をかけてくれたそうです。

「今度、こちらに奥さまを亡くされた方が入居するの。あなたと気が合うかもしれないわよ」と。

その紹介をきっかけにふたりはごく自然に話すようになりました。初めは他愛もない世間話。そして、お互いのどこか似た境遇について。そんなきっかけもあり、ふたりはごく自然な形で「今度食事をご一緒しましょう」となり、ホームの外に食事に行くことになったそう。

そして2度目の食事のときには、もうお互いに惹かれ合っているのがはっきりとわかるような雰囲気で……気がつけば、自然と“カップル”になっていたというのです。

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今、2人は同じ施設の別々の部屋で暮らしながら、毎日ともに過ごしています。

驚いたのは、ふたりで海外旅行まで楽しんでいること。行き先はなんと日本! 東京に来たときに3人で食事をしました。お2人とも本当に元気で、食欲も旺盛。見ていてこちらまで元気になるような、そんな素敵なカップルでした。

「もう80代でしょ?」と思う方もいるかもしれません。でも、そんな年齢の枠を2人は軽やかに飛び越えていました。

人生は、思っているよりもずっと長く、予想もしなかったタイミングで思いがけない出会いや変化が訪れるものなのかもしれません。

やはり人とのつながりは、年齢に関係なく、生きる力になってくれる。そんな当たり前で、とても大切なことを、私は恩師の姿から教えてもらいました。

アグネス・チャン 歌手・エッセイスト・教育学博士

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あぐねす ちゃん / AGNES CHAN

ユニセフアジア親善大使・日本対がん協会微笑み大使・大阪経済大学客員教授

1955年8月20日香港生まれ。14歳で香港デビュー、17歳の時に『ひなげしの花』で日本デビューし、トップアイドルに。 上智大学国際学部を経て、カナダのトロント大学(社会児童心理学)に留学。85年に結婚、翌年の86年に長男を出産。89年、米国スタンフォード大学教育学部博士課程に留学。留学中の89年に次男を出産。94年に教育学博士号(ph.D)を取得。96年に三男を出産。芸能活動ばかりでなく、エッセイスト、日本ユニセフ協会大使、日本対がん協会「ほほえみ大使」など文化人として幅広く活躍。息子3人全員がスタンフォード大学に合格したことでも話題に。著書に『スタンフォード大に三人の息子を合格させた50の教育法』(朝日新聞出版)など120以上の著作を世界各地で出版。   

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