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「制作には2年近くも」日本に8人しかいない≪切手デザイナー≫東京藝大の受験に4回失敗、45歳で辿り着いた職で味わった“悲喜こもごも”

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近年の切手の発行枚数は、普通切手を除いた特殊切手だけで、年間約8億8000万枚。貝淵さんたちデザイナーが生み出す作品は、それだけの数、人々の想いを乗せて日本中を旅しています。

その壮大な仕事に、彼女は20年間、人生を捧げてきました。しかし、そろそろ終わりが訪れます。

「来年の3月には定年を迎えます。実は、もう切手のデザイン担当は終わってしまったんですよ。発行されるタイミングで担当者がいないというのは、各所が困ってしまうので。やりたいものがあっても作れないんだとわかってから、切手を生み出すことができた時間って、すごくありがたかったんだなと、今頃改めて気がつきました」

切手ならではの魅力は?「ピリピリ、ピリピリって…」

切手づくりを通して伝えたいことはまだまだ尽きないけれど、そのバトンは、次の世代へと託されるのです。では、定年を迎えた後、彼女は何を描くのでしょうか。「なにも考えてないです」と、いたずらっぽく笑った後、少しだけ声を潜めて、秘密を打ち明けてくれました。

「実は、また日本画を勉強し直してみたいと思っているんです。どこか大学院や教室に通うのか、どのくらいまで極めるのかは、まだ悩み中ですが」

貝淵さんの人生の旅は、まだまだ終わらないようです。

最後に尋ねたのは、これから先も残ってほしい“切手ならでは”の魅力。

「なんだろう……やっぱり、この手のひらサイズの小ささかな。それから、今は台紙から剥がして貼るシール式がほとんどになってしまったけれど、昔ながらの“裏のり式”の切手も残ってほしいなっていう思いはあるんですよね」

一枚ずつ切り離し、裏を濡らして貼る、少しだけ手間のかかる、あの切手。

「ピリピリ、ピリピリってね、本当気持ちいいんですよ。なので、その“いかにも”な切手もずっと残ってくれると嬉しいです」

効率や便利さだけでは測れない、人の手の温もりや、ささやかな喜び。貝淵さんが守り、伝えたかったものの正体は、そんなところにあるのかもしれません。

次にあなたが誰かに手紙を書くとき、その手に“ピリピリ”と切り離す切手があったなら。その一枚に込められた、一人の女性の「すべて無駄じゃなかった」人生の物語に、少しだけ想いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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