「制作には2年近くも」日本に8人しかいない≪切手デザイナー≫東京藝大の受験に4回失敗、45歳で辿り着いた職で味わった“悲喜こもごも”

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計画が固まると、次に決まるのは担当デザイナー。しかし、ここから担当が一人で黙々と作業を進めるわけではありません。企画の詳細やプロモーションのアイデアを考える「切手プランナー」とチームを組み、二人三脚で切手のイメージを膨らませ、コンセプトを検討していきます。

コンセプトが定まったら、切手デザイナーがそれをカタチにしていくわけですが、貝淵さんの場合は、どんな手順で進めていくのでしょうか。

「はじめからパソコンで絵を描くデザイナーもいますが、私は鉛筆でラフデザインを描くところから始めます。使いやすい銘柄も決まっているんですよ」

絵の予備校に通っていた時代から約50年、今でも変わらない癖があると言います。それは、「練りゴムをこねながら、デザインの案を考えること」。そして、「頭を空っぽにしたいときは、ひたすら鉛筆を削ること」。

貝淵さんのデザイン用具
先の尖った鉛筆に練りゴム、カッター、ラフ用紙。鉛筆の“削りかす入れ”も隣に常備(撮影/今井康一)

デザイン制作の工程だけで数カ月。刷り色は何度も確認

そうしてアナログな方法で生まれたアイデアの種を、今度はパソコンを使って具体的なデザインへと落とし込んでいきます。作品によっては原画として水彩画を描き、それを取り込んで切手用データに仕上げることもあるそう。

「デザイン制作には、1カ月から2カ月……長いときは3カ月ほど。写実的なデザインの場合は、絵を描く時間も長くかかります。昔の記念切手は1券種でしたが、近年普及してきたシール式切手は、1シートにつき約5〜10種類。時には、20種類のデザイン案を一度に進めることもありますね。

各方面からのチェックを受け、OKが出たら次は印刷。最近は、海外の印刷会社が製造することも増えてきました」

印刷の色合いが光の加減で変わってしまわないよう、色の調整(色校正)にも細心の注意を払うことが鉄則。デザイナーは、印刷会社から上がってきた試刷品を、特別なライトの下で何度も何度も確認するのだそうです。

パソコンを見る貝淵さん
パソコン上で切手デザインの確認をする貝淵さん。その眼差しは真剣そのもの(撮影/今井康一)
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