日本人は「限界費用ゼロ社会」を知らなすぎる 文明評論家リフキンが描く衝撃の未来

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さて、日本では2011年3月11日、巨大な地震と津波が福島の原子力発電所を破壊し、放射性物質が放出されて広範な土地が汚染され、1986年のチェルノブイリの原発事故以来、最悪の核災害が起こった。その後日本政府は、全国の原子力発電所の運転をすべて一時的に停止した。

福島の原子力発電所の事故が引き起こした政治的な衝撃波は全世界に及んだ。ドイツではメルケル首相が2022年までに国内の原子力発電所をすべて段階的に稼働停止にし、分散型の再生可能エネルギー体制への移行をただちに加速するという驚くべき発表を行い、事実上、グリーンな第三次産業革命のパラダイムへの転換を速めた。2011年9月、世界第35位の企業であるドイツの製造大手シーメンス社が、今後、原子力発電所の建設には関与しないと発表した。

今日、ドイツがIoTによる第三次産業革命の土台を築き、資本主義市場と共有型経済の両方から成るハイブリッドの経済体制に向かおうとしているのに対して、日本は、老朽化しつつある原子力産業を断固として復活させる決意でいる堅固な業界と、日本経済を方向転換させて、スマートでグリーンなIoT時代への移行によってもたらされる膨大な数の新たな機会を捉えようとする、新しいデジタル企業や業界との板挟みになってもがいている。

本稿を書いている時点で、両国の根本的な違いは、20世紀の化石燃料と原子力を脱し、限界費用がほぼゼロで採取できる分散型の再生可能エネルギーへと迅速に移行するのが、将来ドイツが経済的に成功するカギであることを、ドイツの政府も産業もシビル・ソサエティもすでに理解するに至った点にある。

IoTは高い水準の総効率と生産性を実現する

まだ日本は気づいていないが、台頭しつつあるIoTは、これまでの歴史上のあらゆる経済革命を特徴づけてきた三つの決定的に重要な要素から成り立っている。

その三つとはすなわち、経済活動をより効率的に管理する新しいコミュニケーション・テクノロジー、経済活動により効率的に動力を提供する新しいエネルギー源、経済活動をより効率的に動かす新しい輸送手段だ。仮に日本が従来の道を進み、ユニバーサル・サービスの高速ブロードバンドと自動運転輸送だけを推進し、おもに原子力と化石燃料のエネルギーに頼り続けたなら、限界費用がほぼゼロのグリーンエネルギーで動く経済がもたらす、総効率と生産性の著しい向上や限界費用の削減を達成することはできないだろう。ドイツはこの点を理解しているのだ。

これに劣らず重要なのだが、IoTのプラットフォームは、第一次・第二次産業革命のインフラとは構造設計が根本的に異なることも、ドイツは理解している。過去二つの産業革命のコミュニケーションとエネルギーと輸送の様式は、中央集中型で専有的なものとなるべく設計されており、規模の経済によって総効率と生産性を最適化する、垂直統合型の企業に有利なビジネスモデルを伴っていた。

それとは対照的に、IoTはすでに論じたとおり分散型で、開かれた透明な形で稼働し、協働によって機能し、水平展開型のビジネスモデルを伴い、第一次・第二次産業革命で達成されたものよりもはるかに高い水準の総効率と生産性を実現し、限界費用を劇的に削減する。IoTプラットフォームによって旧来のビジネスモデルは脇へ押し退けられるので、日本の起業家たちは、もしスマートでデジタル化したグローバル経済への移行を生き延びて成功したいなら、自らのビジネス手法を再考せざるをえなくなる。

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