アフリカのスラムを変える小さな日本企業 スラム出身の若者と二人三脚!

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ブルースプーンキオスク店内

2つ目は健康関連の事業だ。月1回程度、郡政府と提携し、キオスク近くに設置したテントで健康診断を実施していく。スラム住民達に、体重や血圧測定を行い、コミュニティ・ヘルス・ボランティアがBMIデータなどを元に健康に関するアドバイスをする。

前出のエスタさんは子どもと一緒にヘルスチェックを受けている。「私はアドバイスを受けて体重が減ったし、子どもを病院に連れて行ったこともある」。

政府が提供するサービスの存在が知られていない

8月から、アフリカスキャンは地域住民の健康増進支援を目的にした「ヘルスクラブ」を開設。SMSを登録すれば、誰でも無料で会員になれる仕組みで、インストラクターによるレッスンや、公衆衛生の知識を普及する。8月1日にはダンス大会を開いて、ヘルスクラブの開始を告知。1日で117人が会員登録した。

この事業は、パトリックさんが企画、運営している。出身地のスラム住民の健康と勤め先の会社のビジネスにつながる潜在顧客との接点作りに役立ちそうだ。

健康診断の様子

前々回記事に記したように、ケニア政府は現在、全ての国民を対象にした健康保険制度、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の普及を目指している。現在は公務員や大企業で働く人など、国民の2割しか健康保険に入っていない。同国民の4割が貧困層とされるため、スラム住民が健康情報にアクセスし、必要な治療を受けても経済的に不安を覚えずにすむ、UHCは国の発展のために不可欠だ。

エスタさんの場合、上の子どもたちを出産した際は、1日1500ケニアシリングの入院費用がかかった。「体調がよかったので2日で退院した」と言うが、ジェトロBOP調査に照らすと、家族2人・1カ月分の食費に相当する出産・入院費用は家計に大きな負担だっただろう。一方、8カ月の末っ子を出産した時は「無料だった」。

これは、UHCの一環として導入された「フリーマタニティサービス」のおかげだ。日本では健康保険証を持って病院へ行き、自己負担を抑えるのは当然の行動だ。一方、公的な健康保険制度が根付いていないケニアの庶民にとって、政府が提供する医療サービスを使うのは、日常的な行動ではない。エスタさんのように、情報を活用する賢い消費者が増えて行けば、スラム住民の健康や家計状態も改善していくだろう。

ところで、パトリックさんの夢は、大学に進学し、ビジネスとコミュニティ貢献を学ぶこと。「アフリカスキャンで頑張って働いて、アフリカ中に雇用を生み出したい」と言う。大学進学に備え、パトリックさんは今も、e-learningで大学の授業を受講している。

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