「蚊帳」で子供の命を救う!日本企業の執念 40万人の命を奪う「マラリア」と闘う住友化学
1960年代生まれ以降の現役世代にとって「蚊帳」と聞けば、『三丁目の夕日』に出てくるようなおじいちゃん、おばあちゃんの世代が使っていた、昭和の遺物のイメージであろう。しかしながら、日本の技術を使ったこの「蚊帳」が、世界で幼い子供の命を今も救っているという事実は、多くの人に驚きをもって受け止められるべきだろう――。
その蚊帳は1990年代に開発された、住友化学のオリセット®ネット。マラリア防除などのために、アフリカやアジアなどで年間にして数千万張りの規模で使われている。ケニアでは市場シェアナンバーワンを獲得。しかし、発売当初は思うようには売れず、在庫の山を築いたこともある。そのオリセット®ネットはいかにして生まれ、市場シェアトップに躍り出たのか。『日本人ビジネスマン、アフリカで蚊帳を売る』の著者である浅枝敏行氏に寄稿していただいた。
マラリアの抑制は全世界の重要課題のひとつ
現在、世界で年間40万人以上の乳児の死亡要因とされるマラリア。日本においては1950年代に沈静化した後は、事実上の撲滅状態を維持できているが、全世界においては途上国を中心に、いまだ数多くの幼い子供が命を落とす原因となっている。そして、感染すると、就業や教育の機会を失うこともあるため、「貧困の病」とも呼ばれている。
開発の進んでいない地域やそこでの貧困が、結果としてテロにかかわる人々や勢力を生み出す温床になりかねない側面もあることから、より安全で豊かな世界をつくるべく、マラリアの抑制は全世界の重要課題のひとつとして、多くの方策が試みられてきた。
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