「蚊帳」で子供の命を救う!日本企業の執念 40万人の命を奪う「マラリア」と闘う住友化学

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同じ地域での比較調査では、この蚊帳による予防と診断や治療を施した地域では、実施していない地域に比べてマラリアの罹患率が2~3年間で実に数分の1ほどにまで低下した、という例が複数報告されている。全世界での使用規模を考えたとき、この「蚊帳」という「モノ」が守ってきた命は、決して少なくない数(むろん、本来は決して『数』で測られるべきものではない)に上っているといえるだろう。このような高い効果をもたらす技術水準を実現しているからこそ、世界に認められる、高性能な製品としての立場をつくり上げることができたといえる。

さらにこのオリセットは、触れた蚊や虫をノックダウンして活動できなくするのみならず、糸を強い素材にして耐久性を向上させたり、網目を大きく設計することで風通しをよくし、中にいる人に暑さを感じさせない配慮まで施されている。

「配布」から「販売」へ転換する、第2の産みの苦しみ

私たち日本など先進国の生活圏では、一般的に「よいモノ」は、まず市販されて売り出され、その後に人気商品となり、それから必要な企業によってまとめて買われたり、あるいは保健機関などによって大量調達されたりする流れが想像されるはずだ。

しかしながらこのオリセットは、生みの親となった伊藤博士による「マラリアで苦しんでいる人のために届けたい」という強い思いを原点に構想し開発されたがゆえに、必ずしも明確な売り先があったわけではなかった。

まずは無償配布によって苦しんでいる人のところへ届けられる形で、世に出ることとなった。一定期間が経った後から、アフリカ地域を起点に一般向けに販売されるという、数奇な運命をたどっている珍しい製品でもある。今では東南アジア地域のイオンの総合ショッピングモールなどにおいても、販売されるようになっている。

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