日本流マネジメントは途上国医療を変えるか ケニア現地取材で考える
今から4年前に見たグラフを、よく覚えています。出産予定の病院で受けた母親学級で、産科医の先生が示してくれた、妊産婦死亡率のグラフです。高い死亡率は、1950年代半ばを境に、ガクンと下がっていました。先生曰く「これは、病院での出産が増えたからなのです」。
WHOによれば、日本の妊産婦死亡率は出生10万人当たり6人と、諸外国に比べて低くなっています。ほかの先進諸国は、アメリカ28人、フランス9人、ノルウェー4人、イギリス8人、ドイツ7人(いずれも2013年の数字)で、日本は、お母さんが死なずに赤ちゃんを産める国であることがわかります。
一方、開発途上国における出産は、今でも命がけの仕事です。ケニアもそのひとつですが、近年、日本流マネジメントの導入によって医療制度改革が進んでいます。現地で働く日本人がケニアの人々の健康状態を改善するために、制度、病院のマネジメント、啓蒙活動にどうかかわっているのか。現地取材からお伝えしたいと思います。
妊産婦死亡がまだまだ多いケニア
サファリにライオン、キリン、シマウマのイメージで日本人にもなじみ深い国、ケニア。人口約4000万人、経済成長率は年率5~6%に達しています。それでも2013年の出生10万人あたりの妊産婦死亡率は400人と、日本の1901年頃と同じくらいです。
順調に経済成長している東アフリカのリーダーですが、公的な医療保険制度に加入しているのは国民の2割程度、会社員や公務員など安定雇用にある人たちだけです。失業者、零細企業勤務者、自営業主など、経済的に脆弱な人々は医療保険制度に入っていません。失業率は公式統計でも40%に達し、人口の4割が貧困層とされています。
2013年に就任したウフル・ケニヤッタ大統領は、医療保険制度改革を提唱、日本を含む各国が財政や仕組みづくりで支援しています。ファースト・レディであるマーガレット・ケニヤッタ大統領夫人は、妊産婦死亡をなくすキャンペーン”Beyond Zero”を提唱、それを受けて、自動車病院のモバイルクリニックが各地に配置されました。
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