「未承認薬」が使える日は訪れるのか 米J&Jが患者の要請検討する委員会を設置
ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、患者からの未承認薬使用の要請について検討を行うため、著名な医学倫理学者を迎えて委員会を創設する。
J&Jは5月7日にこの決定についての発表を行った。同社のこうした展開は業界初の試みだと思われるが、J&Jの規模と影響力を考えると、他社もこれを受けて追随する可能性がある。J&Jがこうした動きに出た背景には、末期患者がその病気の治療に効果があると思われる医薬品を、試験段階であっても入手しようとする動きが、少数ではあるが増えてきているという状況がある。
エボラでも明らか、使える未承認薬はわずか
そうしたケースの中には、家族や支援者らが患者の代わりに運動を行い、ソーシャルメディアで大きく注目を集めたものもある。だが、多くの場合、その努力は実を結んでいない。なぜなら、製薬会社は未承認薬の利用を認めることにより、臨床試験に支障をきたすのではないかと懸念するからだ。エボラ出血熱の流行時に見られたように、患者に提供できる薬は非常に少ない。
この問題には、公平さや治療機会の平等といった根本的な問題も関係し、熱心に論じられるようになっている。10以上の州で、未承認薬の利用を認めるプロセスのスピードを上げるため、法案が検討されてきた。
J&Jによると、同社が設置する委員会を監督するのはニューヨーク大学のアーサー・L・キャプランだ。キャプランは「コンパッショネート・ユース(人道的使用)」として知られる、未承認薬の利用について幅広く執筆してきた。J&Jの委員会は医師や倫理学者、患者の支援者らで構成され、数に限りのある未承認薬を入手したいという患者からの要請について検討し、J&Jがどう対応すべきかを決定する。
このプログラムの資金はJ&Jが提供するが、同社によると、J&Jが委員会の決定に影響を及ぼすことはなく、資金は直接ニューヨーク大学に支払われるという。キャプランはこのプログラムでの仕事で、報酬を受け取ることはない。