アステラス製薬、合併10年で得た手応え

山之内と藤沢薬品の合併は何をもたらしたか

「3領域の売り上げがバランスのいい形になってきた」と語った畑中好彦社長
山之内製薬と藤沢薬品工業の合併で発足してから、2015年4月で10年の節目を迎える業界2位のアステラス製薬。2012年から販売している前立腺がん治療薬「イクスタンジ」が年商1000億円超に育つなど、足元は上り調子。成長の持続に向けた今後の戦略について、畑中好彦社長に聞いた。

 

――合併を経て今の好調に至った理由をどう考えているか。

もともと得意だった泌尿器と移植・免疫の領域が順調なうえ、第3の柱としてがん領域が成長したことが大きい。2014年第3四半期(4月~12月)には3領域の売上高がどれも1500億円ほどで、バランスのいい形になってきた。

合併前の両社の規模だと、がんの研究開発から販売までを行うことは体力的に無理だった。がんの一つひとつの臨床試験は循環器系に比べると小さいといわれるが、さまざまながん種や投与タイミングがあり、広がりが非常に大きい。また、治療ニーズが高く、次々に創薬ターゲットが出てくる領域でもある。そこに参入するのが、アステラス発足の一つの目的だった。

がん領域は当時から極めて競争が激しかった。内部で研究開発投資を続けるのはもちろん、買収や他社製品の導入など外部の力も取り入れて、足りない部分を補強してきた。そうしてようやく今、開発競争の入り口に立てたと思っている。今後は免疫療法や遺伝子変異によるがんにも取り組んでいく。

特許切れを恐れる必要はない

――合併の翌年には大衆薬事業を売却した。

当社の規模でいくつもの事業をやると、経営資源が分散され、結局はグローバルでの競争力を持てない。そこで、方向性と戦略はシンプルにして、強みの新薬開発に集中するのが得策だと考えた。

――足元は好調だが、2018年には現在の主力製品である過活動膀胱治療薬「ベシケア」、非小細胞肺がん治療薬「タルセバ」の米国での特許切れを迎え、業績が落ちる可能性がある。

特許切れの前に製品の売り上げや利益が高まれば高まるほど、特許切れ時のリスクが大きくなるのは製薬業界の皮肉な点だが、決してそれを恐れる必要はない。特許切れの時期はあらかじめわかっているので、どう乗り越えるかが勝負。それにはどんどん新薬を出すしかない。

新薬開発はなかなか予定どおりには進まないし、計算通りにはいかない。医療用医薬品のビジネスにおいては、パイプライン(新薬候補)を充実させて、研究開発の生産性を上げていくことが最大の命題だ。

――新薬開発には費用も時間もかかる。リスクを小さくする工夫は?

かつては、どの開発プロジェクトにも同じトーンで力をかけていた。しかし今は研究早期段階から社内の全精力を傾けるもの、効率的かつ早期にヒトでの有効性・安全性の確認を目指すものなど、開発資源の配分に濃淡をつけている。

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