「正露丸のラッパ音」、商標出願に至る舞台裏 大幸薬品はなぜ"音"を商標登録するのか

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1946年に販売された「忠勇征露丸」のパッケージには、ラッパのマーク(右下)が描かれている

「パッパラパッパ パッパラパッパ パーラパッパ パッパッパー、パッパラパッパ パッパラパッパ パーラパッパッパー」

テレビCMなどでおなじみの“あの音”が4月1日、商標として登録出願された。申請したのは、胃腸薬「正露丸」を手掛ける大幸薬品だ。

10秒ほどのレトロな風情のメロディーは、日本の旧陸軍の食事時間を知らせる「食事ラッパ」をモチーフにしたもの。ラジオCMを開始した1951年から、60年以上にわたって使われてきた。

今回の商標登録出願に、大幸薬品は並々ならぬ思いがある。というのも、「正露丸」という名称は大幸薬品の登録商標であるものの、「一般的な名称になっている」との判決が1974年、2008年に最高裁で確定。そのため、他社でも自由に商品名に使うことができ、大幸薬品以外にも和泉薬品工業など複数の会社が正露丸を販売している。

日露戦争後から多数の正露丸が共存

なぜ一般的名称になっているのかというと、日露戦争後の“正露丸ブーム”で数多くの正露丸が現れ、何十年もの間、それらが共存してきたからだ。

正露丸は1902年に大阪の薬商、中島佐一薬房が「忠勇征露丸」という名で発売。その後、1946年に大幸薬品が製造販売権を取得し、1949年に「中島正露丸」、1954年に「正露丸」に名前を変更した。ただ、1904年に始まった日露戦争に日本軍が携行して勝利を収めたことで、人気が沸騰。知的財産保護の考えもなかった時代のこと、他社からも「正露丸」を名乗る製品が多数登場した。

こうした背景から、大幸薬品は正露丸の“名称”を独占できなかったわけだが、独自のブランディングとして軍隊ラッパを活用してきた。1946年のパッケージにもラッパのマークが描かれており、少なくとも約70年も前からラッパが大幸薬品の製品の象徴として使われていたことがわかる。

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