もっと自分の個性を発揮したい。しかし、業界や組織の常識には抗えず、仕事のやり方を「人形焼き」のように型押しされる。このまま自分は量産型のクローン組織人になってしまうのだろうか。それならいっそ、転職しようか……。
はっきり言おう。そんな甘っちょろい考えをもってしては、今いる業界や組織から逃げ出しても、口を開けて待っている次の鋳型に押し込まれるのが関の山だ。固有の存在価値を認めてもらいたければ、業界や会社を説得し突破できるだけのサバイバル術を培おう。
そこで今日は、脳がちぎれるほど考え抜き、摩擦で身を削がれるほどやり抜くことによって、「もはや手詰まり」と皆が思うような状況に何度も打ち勝ってきた変人を紹介しよう。
大震災後の「空気を変えた」CM
4年前の今日、1人の男が全身の細胞を思考することに集中させていた。東日本大震災で沈み切ってしまった日本に、自分は、自分の会社は、何ができるのか。そんな折に頭に浮かんだのが、「歌う少年」だった。
約1カ月後、この光景を原形にしたテレビCMが全国で放送されることになる。ミゲル少年が高らかに歌うこのCMは、2011年(8月)のCM好感度1位を獲得。TwitterをはじめとするSNS上でも大きな話題となった。
制作の陣頭指揮を執ったのが、エステー宣伝担当執行役の鹿毛康司。またの名を、特命宣伝部長・高田鳥場(たかだのとりば)という。彼の仕事について、「破天荒なことをしたら、たまたまヒットしただけじゃないか」と思う人がいるかもしれない。だが、それは違う。ヒットの裏には会社人生を通じて培ってきた、緻密な「気遣い」があるのだ。
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