「エステーCMの父」流、突出社員の生き方

「被り物の執行役」はタダの破天荒じゃない

 「起業」という言葉は、起業家のためだけにあるものではない。「業(なりわい=仕事)を起こすこと」は、組織の中でもできる。いやそれどころか、新しいビジネスを生み出さなければならない組織人にこそ必要とされるアクションだろう。
 さあ立ち上がれ組織人。今、あなたの立場で、業は起こせる。それも、上手にやれば大規模に。本連載では、会社をはじめとする「大組織」で、“変わり者”だと思われても“変えること”に挑み、新たな仕事をつくり出す「組織内変人」を紹介する。
この鳥男の正体は?(撮影:尾形文繁)

もっと自分の個性を発揮したい。しかし、業界や組織の常識には抗えず、仕事のやり方を「人形焼き」のように型押しされる。このまま自分は量産型のクローン組織人になってしまうのだろうか。それならいっそ、転職しようか……。

はっきり言おう。そんな甘っちょろい考えをもってしては、今いる業界や組織から逃げ出しても、口を開けて待っている次の鋳型に押し込まれるのが関の山だ。固有の存在価値を認めてもらいたければ、業界や会社を説得し突破できるだけのサバイバル術を培おう。

そこで今日は、脳がちぎれるほど考え抜き、摩擦で身を削がれるほどやり抜くことによって、「もはや手詰まり」と皆が思うような状況に何度も打ち勝ってきた変人を紹介しよう。

大震災後の「空気を変えた」CM

4年前の今日、1人の男が全身の細胞を思考することに集中させていた。東日本大震災で沈み切ってしまった日本に、自分は、自分の会社は、何ができるのか。そんな折に頭に浮かんだのが、「歌う少年」だった。

約1カ月後、この光景を原形にしたテレビCMが全国で放送されることになる。ミゲル少年が高らかに歌うこのCMは、2011年(8月)のCM好感度1位を獲得。TwitterをはじめとするSNS上でも大きな話題となった。

制作の陣頭指揮を執ったのが、エステー宣伝担当執行役の鹿毛康司。またの名を、特命宣伝部長・高田鳥場(たかだのとりば)という。彼の仕事について、「破天荒なことをしたら、たまたまヒットしただけじゃないか」と思う人がいるかもしれない。だが、それは違う。ヒットの裏には会社人生を通じて培ってきた、緻密な「気遣い」があるのだ。

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