「エステーCMの父」流、突出社員の生き方 「被り物の執行役」はタダの破天荒じゃない

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「大切なのは、トラブルが起きそうなとき、なんだか危なそうだからといってアイデアをシュリンク(萎縮)させるのではなくて、『法と倫理』でトラブルを排除することが必要だと思うのです」

ニュースの合間をAC(公共広告機構)のCMが埋め尽くす中、鹿毛さんは「消臭力」のCM制作に取り掛かった。まずはありとあらゆる震災の映像を集めてチェックし、「津波を想起させないために絶対に水を映さない」、「被災地の報道映像のように高台から俯瞰するような撮り方はしない」など、細かい取り決めをつくった。

絶対に、1人たりとも傷つけない――。その顧客に対する底知れぬ「気遣い」こそが、冒頭にお伝えした通り、震災後の日本の空気を変えたのである。

「幸せの青い鳥」ならぬ、「笑顔を運ぶ黄色い鳥」である鹿毛さんのお話を聞けば、皆さんもはっきりわかるだろう。エステーは、ただウケを狙ってCMをつくっている会社ではないし、鹿毛さんはただ破天荒に仕事をしている人ではない。鳥のマスクの奥では、誰よりも真剣に、緻密に「人」のことを考えているのだ。

私が会社を辞めない理由

最後に鹿毛さんに、雪印で節目を迎えたとき以外に会社を辞めようと思ったことはないか聞いてみた。

「MBAを取って帰ってきたとき、実はコンサルティング会社を受けようと考えたことがあります。面接を申し込んで、その会社の入り口まで行って、でも結局、入りませんでした。考えてみれば、MBAだって100%自分の力ではなく、会社の力で行けたわけで。会社の人たちの顔を思い浮かべると、この人たちを裏切りたくないと思いました。そして面接辞退の電話を入れ、そのとき僕は『雪印に転職しよう』と思ったのです」

自分のステージを上げるための手段は、決して転職だけではない。鹿毛さんはそう教えてくれたように思う。4月からはクリエイティブ関連の統括に加え、エステーのさまざまなホームケア商品の開発にもかかわっていくという。不死鳥のごとくサバイバルを重ねてきた鳥男の挑戦は、また新しいステージで続いていきそうだ。

次回の変人さんは?

次回の変人さんは、小売業界で働く「マーケティングの鬼」である。しかも、当連載のサブタイトルで「その会社、なんで辞める必要がある?」と問いかけているにも関わらず、これまでのキャリアで転職をしまくった人物でもある。

とはいえ、その「転職人生」には、普通では考えられないほどの覚悟と、人生を通して彼が追い求める「真理」があった。そこを余すところなくご紹介したい。

合い言葉は、変人ウォッチ!

※ 次回は3月27日(金)の予定です。お楽しみに!

川下 和彦 クリエイティブディレクター/習慣化エバンジェリスト

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かわした かずひこ / Kazuhiko Kawasita

2000年、慶應義塾大学大学院修士課程終了後、総合広告会社に入社。マーケティング、PR、広告制作など、多岐にわたるクリエイティブ業務を経験。2017年春より、新しい事業を創造し、成長させることを標榜するスタートアップ・スタジオに兼務出向。広告クリエイティブに留まらず、イノベーション創出に取り組んでいる。著書に『コネ持ち父さん コネなし父さん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ざんねんな努力』(アスコム)などがある。(撮影:原貴彦)

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