「正露丸のラッパ音」、商標出願に至る舞台裏 大幸薬品はなぜ"音"を商標登録するのか

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ラッパのマークについては、すでに商標登録が済んでいる。残すはラッパのメロディーだった。大幸薬品は「ラッパのメロディーもブランドを構成する1つの要素。商標登録によってブランドを保護・強化し、類似品との区別を狙う」と説明する。

狙いはそれだけではない。「ラーメンを想起させるチャルメラ音のように、テレビやゲームなどのお腹が痛くなるシーンで正露丸を想起させる音楽として広く使ってもらいたい」と、メロディーによるブランディング展開も視野に入れている。

出願の背景に改正法の施行

現在販売されている正露丸のパッケージ

今回の出願の背景には、4月1日の改正商標法施行がある。従来は「文字」や「図形」など2次元のものに限られていた商標の対象が、「音」をはじめ「動き」「ホログラム」「色彩」「位置」にも広がった。

欧米、韓国、台湾、香港、シンガポールなど海外ではこのような商標をすでに導入しており、日本企業が海外で権利取得を進める事例も増えていた。たとえば久光製薬は、欧州などで「ヒ・サ・ミ・ツ」のメロディー、「匂い」が商標登録できる米国では、貼り薬のミントの香りを商標登録している。

日本は商標の制度面で世界の流れに後れを取っていたが、ようやくグローバルスタンダードの導入に至った。特許庁によると、出願受付初日の4月1日15時時点でオンラインでの出願が207件(音75件、色彩74件、位置43件、動き15件)、17時までの窓口を通じた出願は9件(音2件、色彩7件)に上った。ニーズの高さがうかがえる。

大幸薬品は正露丸を中国、香港、台湾を中心に海外でも販売している。長年テレビCMにラッパのメロディーを使っている香港では、2004年にメロディーの商標登録をした。今後、香港以外の海外でもメロディーの商標登録を検討している。

狙いは、跋扈(ばっこ)する“偽物正露丸”の排除だ。ただ、香港では「商標登録しているため、当局に偽物排除のお願いをしやすくはなっているが、効果は出ていない」(大幸薬品)との実情もある。

メロディーの商標登録が、どれだけビジネスに有利に働くかは未知数。大幸薬品は正露丸の名称で果たしきれなかったブランディングの夢を、ラッパのメロディーで取り返すことができるだろうか。

長谷川 愛 東洋経済 記者
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