
──この本には、今の阿部さんからは失敗作と見える論文も収録されています。
米国留学中の2017〜23年に書いた論文から、9本をおおむね時系列に沿って収録している。失敗作といっていい論文も入れたのは、論文が成長していくプロセスを示したかったからだ。
大学院生は、完璧な論文を書かなければと思いがちだが、そのせいで、なかなか学会誌に提出できなかったりする。しかし、完璧な論文なんてない。書いて、出して、採用されて、「これでも通るんだ」と体感することで、だんだんと書けるようになっていくものだ。
本書では書き手としての成熟・成長のプロセスをそのまま読者に見せたかった。
──各章の冒頭では、執筆・投稿の経緯、その論文がアクセプト(受理)されたのかリジェクト(却下)されたのか、論文への自己評価などのコメントを付し、徹底して手の内を明かしています。
立派な大学の先生たちも、院生や学部生の時期にはうまく書けなかった。そこから徐々に学んで、書けるようになっていったはずだ。
ところが恥ずかしいのか、弱さを見せたくないのか、みんなそういう成長のプロセスを見せたがらない。気持ちはわかるが、私は、そういう部分こそが院生にとって励みになると思っている。
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