日本流マネジメントは途上国医療を変えるか ケニア現地取材で考える

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ところで、開発途上国における最大の保健課題は、エイズやマラリア、結核など感染症で亡くなる人が多いこと。毎年300万人がこれらの病気で亡くなっており、ケニアでも死因の第1位はエイズです。

現地病院で取材したエイズ感染患者

2000年には、国連安全保障理事会でエイズ問題が取り上げられました。途上国政府や国際的な医療に携わる専門家の危機感は強く「このままでは国がなくなる」と言われたほど。

これを受け、同年のG8九州沖縄サミットで日本が感染症対策のため、資金援助の必要性を提唱し、2年後に出来たのが、世界エイズ結核マラリア基金(通称:グローバルファンド)です。各国政府、民間企業、NGOなど多様な主体が関わる新しい組織で、年間40億USドルを集め、120カ国に資金提供。日本政府も毎年100~300億円程度を拠出しています。

現地で活躍する日本人医師

このファンドのマネジメントにも日本流が生きています。スイス・ジュネーブでグローバルファンドの戦略トップを務めるのは医師の國井修さん。

写真左から2人目が、医師の國井修さん(提供:日本国際交流センター)

ユニセフなど国際機関での経験も豊富です。ソマリアで子どもの飢餓問題に取り組んだ経験もあります。「グローバルファンドは投資の発想で運営しています。リターンは人々の健康。これを最大化するため、戦略的、集中的に取り組んでいます」と話します。

少ない予算を有効に使うための発想は、企業経営とよく似ています。たとえば政府が保健予算を増やしたら、同額をグローバルファンドがマッチングして「保健省と財務省を一緒に動かし、国の保健予算を増やしてもらうようインセンティブをつける」(國井さん)という発想。ファンドが拠出する金額だけでなく、政府の行動を変えることによって得られる、レバレッジ効果を期待するのです。

倉庫内を案内するKEMSA職員

援助対象国の制度、仕組みや人材育成を支援し「最終的に援助はなくなり、各国政府が自分で運営できるようになってほしい」(國井さん)。

取り組みの一例が、ケニアの医薬品供給公社KEMSA。約7000万USドル分の医薬品を保管する巨大な倉庫を保有し、ケニア全土の郡政府向けに物資を供給します。受発注や在庫管理はITで行われ、組織構築には各国の援助機関や国際的なコンサルティング会社が関わっています。

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