出稼ぎで日本に来る娼婦たちの厳しい現実

『娼婦たちから見た日本』を読む

ソウルの永登浦歓楽街、2011年6月撮影(写真:AP/アフロ)

娼婦。その存在はいつの時代も様々な点で男たちを惹きつけてきた。実直な青年と高級娼婦の愛を描いたデュマ・フィス著『椿姫』や映画『プリティーウーマン』などの作品に私も惹きつけられた。これらの作品に出てくる娼婦は、自堕落な生活を送りながらも本当は純真な心を奥底に秘めた哀れな社会の犠牲者として描かれていることが多い。

多かれ少なかれ、男というものは女性に対して神秘的なものを感じている。金銭の対価として、その美しい肉体を差し出す女性たちに男は下卑た視線を向けながらも、彼女たちがその神秘性と、可憐で清らかな心を失わずにいて欲しいと願っている。

だが、このような虚像をはぎ取った実際の娼婦とはどんな人々なのであろうか。本著は日本に関わる娼婦たちを日本国内に限らず、タイ、チリ、シンガポール、インドネシアと世界各地で取材した力作である。

家族のために異国の地へ

単純に言ってしまえば、彼女たちが苦界に身を沈めたのは貧困のためだ。横浜の黄金町界隈で、たちんぼうしていたタイ人娼婦ユリは肺を悪くした高齢の父と産後の肥立ちの悪い妹を養うために日本で体を売る。同じくタイ人娼婦ワラポンはエイズに感染し、病気の末期には高熱で憔悴しきった体を引きずりながら新宿や横浜の界隈に立ち、仕送りを続けた。日本で命を引き取る瞬間までお金を送らねばと言い続けたという。「家族のため」それが彼女たちに共通する思いだ。娘を異国の地の男たちに差し出して、その金で暮らす親や兄弟とはどんな人々なのかと感じてしまう。むろんそれは私たちが恵まれた社会に生きているから感じることなのかもしれないが。

著者も気になったのであろう。ワラポンの実家を訪ねている。かなりの額を送金していたはずのワラポンの実家の中には、家財道具などがほとんど見られず、母親が極貧のままで暮らしていた。ワラポンが送った金はどうしたのかと著者が尋ねると「宝くじを買ってなくなったんだよ」と答えたという。娘が文字どおり命を削って仕送りしていた金は、ギャンブルに消えていたのだ。この言葉の中に貧困というものが抱える闇の深さがうかがえる。

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