この国は、もう子どもを育てる気がないのか

日本は「想像力が欠落した国」になっていた

日本では、結婚して子育てをする、という普通のことが「ぜいたく」と思われるようになってしまった
待機児童問題が話題となった今春、講談社現代新書から『下り坂をそろそろと下る』を上梓した平田オリザ氏と、『貧困世代』を刊行した藤田孝典氏が大激論。「この国はもう、子どもを育てる気がないんじゃないか」「日本社会は分断され、階層化が進む一方だ」。はたして、この国の行方とは――。

 

平田:今回上梓した『下り坂をそろそろと下る』の校了作業をしているとき、子育て中のお母さんが書いた「保育園落ちた」という匿名のブログが大きな話題を呼びました。私の主宰する劇団にも小さい子どもを持つ俳優がたくさんいますが、あのブログは子育て世代の切羽詰まった真実の叫びだと思います。

藤田:私にも子どもがいるのですが、認可施設には入れなくて、しばらく無認可の保育園に入れていましたから、「保育園は落ちるのが当たり前」という感覚でした。でも、あのブログを読んで改めて思ったのは、保育園に落ちることは決して当たり前じゃないし、むしろおかしいということ。多くの子育て世代がそのことに気付いたからこそ、あれだけ大きな議論になったのでしょう。

政府の反応は極めて鈍い

平田:それだけ切実な問題にもかかわらず、政府の反応は極めて鈍いですね。安倍首相は、待機児童の解消について問われた国会答弁で、「保育所」のことを「保健所」と言いました。ただの読み間違いだと言い訳するのかもしれませんが、この問題に対する関心が低いと言われても仕方ないでしょう。ああいう答弁を見ていると、この国はもう、子どもを育てる気がないんじゃないかとさえ思う。

藤田:平田さんはかねて指摘されていますが、リーダーというのは、社会的弱者の声を聞きとる力が求められています。ところが、今の政府には小さな声に耳を澄ませようという姿勢が見られない。他者への思いやり、想像力というものが極端に欠落しています。

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