日本流マネジメントは途上国医療を変えるか ケニア現地取材で考える
各郡政府がKEMSAに医薬品を発注してから届くまでの時間は10週間~16週間。地方の病院では、基本的な器具が足りないといった声も聞きました。背景には需要予測を立てリードタイムを踏まえて発注する発想がないスタッフの能力不足の問題があります。先進国並みのマネジメントに近づきつつある中央の施設と、地方における医療従事者の能力のギャップを埋めることが、今後の課題です。
汚職、賄賂に苦しむ実態
最後に、政府のマネジメントやガバナンス上の課題に触れておく必要があるでしょう。それは汚職の問題です。保健省や病院を取材していると、”Corruption Free Zone”という表示をしばしば見かけました。日本風に言えば「賄賂は、ダメ、絶対!」といった感じでしょうか。
アフリカ諸国は総じて同じ課題を抱えていますが、汚職は大きな問題です。国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナルの調べによると、ケニアのCPI(Corruption Perception Index: 腐敗認識指数)は176カ国中145位。これより下位の国は、ソマリアや北朝鮮(共に175位)、シリア(159位)など。ちなみに、日本は15位で、1位はデンマークです。
ケニアの現大統領は問題を深刻にとらえています。大規模な汚職撲滅キャンペーンも行い、閣僚に逮捕者が出たほど。透明度の高いガバナンスが求められる中、ビジネス出身の政治リーダーも目につきます。前出のマチャリア保健長官は元銀行家で公認会計士。これまでのキャリアを踏まえた強みを「マネジメント経験が豊富であること。援助機関との良好な関係は、アカウンタビリティーを果たさなくては続きません」と話します。
日本が資金や専門家派遣を通じて行う医療制度改革支援は、人道面からも長期的な国益の観点からも重要です。これらを通じて、透明度の高いガバナンスを徹底し、必要な人に必要な支援が届くようになってほしい、と思います。日本流のマネジメントのよい面がどう生かされたか。具体的に見せていくことで、援助資金の担い手である日本の納税者も納得するはずです。
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