アフリカのスラムを変える小さな日本企業 スラム出身の若者と二人三脚!

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このキオスクで人生が変わったのは、ケニア人だけではない。公認会計士の岩瀬次郎さん。現地取材時、ランチに同席してくれた岩瀬さんは穏やかな笑顔の持ち主で、澤田さんとは夫婦である。

夫婦は共に青年海外協力隊員としてセネガルで活動した。岩瀬さんは養鶏など村人の新規ビジネス支援を行った。澤田さんとは活動する村が隣り合っており、協力することがよくあった。

アフリカにかける日本人夫婦

澤田さん・岩瀬さん夫婦と近隣の子ども

「私がセネガルから帰国した時には、彼女はすでにケニアに飛んでいました。彼女のバイタリティ溢れる行動と、アフリカビジネスの魅力を見聞きするなかで、私も再びアフリカに戻り、自分にしかできないことを成し遂げてやろうと思うようになりました」と岩瀬さん。近く、ナイロビオフィスに転勤を予定しており、ケニアで唯一の日本人会計士として、日系企業のサポートに取り組んでいく。

「ケニアに来て戻る様子がない私に、夫が妥協した感じでしょうか。でも、2人ともアフリカの方向を向いていたので、自然なことだったと思います」と澤田さんも言う。

ブルースプーンキオスクは、小奇麗で小さな店であるのにとどまらず、現地の人の購買行動を変え、健康意識を喚起している。そして、能力とやる気はあるが経済条件で不利を蒙ってきたケニアの若者の人生を変えつつある。ある店舗の店長は若い女性。以前働いていたバラ園は地元特産品を作るが、賃金が低く雇用が不安定だった。今の仕事は学べることが多い。能力のある若者にとって、キャリアは夢と同義だ。小さなキオスクは、新興国の若者に不可欠の夢を提供している。

普通に暮らしていれば、大手町でエリートビジネスマンとして生きていたであろう、若い日本男性の未来も変えていきそうだ。その真ん中には、27歳の日本女性が持つ、決して飼い慣らされることのない大きなエネルギーがある。
 

治部 れんげ ジャーナリスト

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じぶ れんげ / Renge Jibu

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。日経BP社、ミシガン大学フルブライト客員研究員などを経て2021年4月より現職。内閣府男女共同参画計画実行・監視専門調査会委員、日本ユネスコ国内委員会委員、日本メディア学会ジェンダー研究部会長、など。一橋大学法学部卒、同大学経営学修士課程修了。著書に『稼ぐ妻 育てる夫』(勁草書房)、『炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版社)、『「男女格差後進国」の衝撃』(小学館)、『ジェンダーで見るヒットドラマ―韓国、日本、アメリカ、欧州』(光文社)、『きめつけないで! 「女らしさ」「男らしさ」』1~3巻(汐文社)等。

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