原発事故15年目の最高裁判決、自主避難者への住宅供与打ち切りの"無法"を指弾した裁判長「反対意見」の意義

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原発事故からの避難の問題で、異例の判決を出した最高裁判所(撮影:梅垣勇人)
最高裁判所で異例の判決が出された。原発事故からの避難に関する訴訟で、最高裁の裁判長自ら、国の無法を指弾し、被害者である女性の主張を認める意見を出したのである。訴訟および前代未聞の判決の一部始終に関してリポートする。

最高裁判所の第2小法廷(三浦守裁判長)は2026年1月9日、東京電力・福島第一原子力発電所事故において、福島県が「自主避難者」の女性に対して「みなし仮設住宅」からの退去と損害賠償を求めた訴訟で、被告である女性の上告を棄却し、県の主張を認めた。原発事故の後、女性は東京都内の国家公務員宿舎を避難先の「みなし仮設住宅」として供与されたが、その後の県による住宅提供の打ち切りおよび退去方針は不当だと主張。退去を拒否した。これに対して福島県は退去と家賃分の損害賠償を求めて提訴。今般、女性の主張は退けられ、最高裁で判決が確定した。

このような結論だけを聞くと、ありきたりな判決に思えるが、最高裁は書面の交付で済まさずに法廷で判決を言い渡した。そこで三浦裁判長は「上告を棄却する」と主文を言い渡した後、「1人の反対意見があります」と付け加えた。

実は、その反対意見を述べたのは三浦裁判長自身だった。判決文26ページのうち16ページを割いて、「放射能汚染が続く状況にあって避難の継続には合理的な根拠があり、自主避難者だけ一律に(みなし仮設住宅の)供与延長を否定する理由はない」と、16年度末で供与を打ち切った国と福島県の対応を厳しく指弾したのである。まさに前代未聞のことだ。

急場しのぎの住宅供与、6年後の「打ち切り」

ここで「自主避難者」と「みなし仮設住宅」を巡る経緯を少し説明したい。

11年3月11日に東日本大震災と福島原発事故が発生した後、厚生労働省は同年5月末までの間に、災害救助法に関する通知を8回にわたり全国の都道府県に送った。民間賃貸住宅や公営住宅の空き部屋を借り上げて「みなし仮設住宅」として避難者に無償供与するよう求め、家賃は災害救助費として国が負担する方針を伝えたのである。

今回の訴訟の対象になった国家公務員宿舎東雲住宅(東京都江東区)も、東京都が国から使用許可を得て無償供与したものだ。

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